表題番号:2002A-045 日付:2003/05/02
研究課題多自然居住地域の創造のための地域連携の実態調査と展望
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育学部 教授 宮口 とし廸
研究成果概要
科学研究費によって、2ヵ年にわたって、4地域において、都市的な生活サポート機能の立地状況とその利用に関して、ヒアリング及び簡単なアンケート調査を行なった。いずれも県庁所在地ないしそれに準ずる中核都市から1時間以上の時間距離を要する地域である。このような地域で、オリジナルな地場の産業を育成しながら、レベルの高い都市的な生活サポート機能を享受できるしくみを作ろうというのが、多自然居住地域の創造という国土計画のテーマである。対象とした生活サポート機能は、病院(風邪等、要手術、出産、歯科)、買物(通常の食材、高級な食材、日常の衣料、外出用衣料)、外食、金融、旅行エージェント、書店、高校、自動車教習所、図書館等である。
 この特定課題研究費によって、4地域のうち北海道富良野地域と岩手県遠野地域について追加調査を行い、研究をより充実させることができた。その結果の概況は次のとおりである。
 富良野地域では、高レベルの機能になると、中核都市である旭川の利用が目立ち、旭川に近い上富良野町のみならず、遠い南富良野町にも旭川の利用が見られ、中核都市の利用が不可欠になってきている状況が窺われる。特に中核都市の利用が目立ったのは、重い病気の場合の入院先、高級な食材の購入、外食のレベルアップ、外出用衣料品の購入、パソコンの購入等である。
 遠野地域では、遠野から見て花巻側にある宮守村・東和町に遠野市の機能を利用する人が格段に少なく、より上位の都市の利用が目立つ。これは花巻市の持つ機能のレベルが実際に遠野市よりも高いという価値判断と同時に、両町村から見て、花巻市が、盛岡市さらには東京というより上位の都市の方向にあるという心理的な効果があるやに思われる。
 上に挙げたレベルの高い機能の利用に関しては、1時間ないしそれ以上の時間をかけて、中核都市まで出かけ、いわば全国的に見てレベルの劣らない機能を得ようという動きが顕著になっていることがわかった。これは全国の生活サポート機能が、地方中核都市レベルでかなり標準化してきていることを窺わせ、小都市の機能のレベルアップによって、余り広域的な移動を必要としない、レベルの高い生活圏の構築には、なお、新たな戦略が必要なことを意味している。