表題番号:2002A-025 日付:2003/03/18
研究課題シュメールにおける王権と家産制
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 第一文学部 教授 前田 徹
研究成果概要
 シュメールの王権は初期王朝時代からウル第三王朝時代にかけて、都市国家分立の状態から領域国家そして統一国家へと展開した。王権の経済基盤は初期王朝時代の都市国家と同様に家産体制に依存した。ウルの王権は支配下の各都市に直営地を設定し、ラガシュでは500ユニット、ウンマでは100ユニットのごとくに画一的な掌握であった。その耕作に専従するものは初期王朝時代と同様に、公的組織に服属し、土地と大麦の支給を受けた。旧来の家産体制を継承するのである。
 そうした前提を踏まえて、ウルの支配下にあるシュメール各都市における公的経営体の実態を解明する必要があり、さらに都市間に相違があるかどうかも確認されなければならない。
 ウル第三王朝時代に統一国家が成立したにしても、シュメール各都市の自立的傾向は維持されいる。中央集権化と地方分権化の相克と捉えても良いが、そうしたなかで、都市の支配者エンシは、それぞれの都市においてウルの王の代官的役割、統治組織の下部を支える役割を期待されながらも、一方において、中央政権からの一定の自立を求める動きも見せたはずであり、それを実証することが必要になる。それが第2の課題になる。
 こうした課題のもとに研究を進めており、第44回日本オリエント学会大会2002.10.19,20 東北大学(仙台)において、「ウル第三王朝時代ウンマにおける支配者(エンシ)とシャブラ」と題する発表をおこなった。隣接したラガシュとウンマを比較しながら、公的経営体の組織の相違、それに起因するシャブラやエンシの都市行政組織における役割の相違が、発表の骨子である。この発表原稿を元にした論文は、『オリエント』第45巻第1号(2003.9.)に掲載される予定である。