表題番号:2002A-016 日付:2003/05/09
研究課題オーストラリアのナショナリズム
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 助教授 澤田 敬司
研究成果概要
 オーストラリアのナショナリズム研究の系譜は、既にラッセル・ウォード、リチャード・ホワイト、グレアム・ターナーらの仕事で、優れた分析がおこなわれている。ここに新しい視点を持ち込むために用いた方法論は、まず演劇に現れたナショナリズムを分析してみること、さらに、日本のナショナリズムとの比較を検討することであった。特に、日本の演劇とナショナリズムの関係はこれまでほとんど言及されたことはない。というのも、つい最近までナショナリズムは、軍国主義や国家主義の側面のみをとらえて、また国家による強権によって展開されるナショナリズムに対する批判はあっても、ナショナリズムがいかに大衆に消費されているか、ひいては日本において人々がどのようにネーションを想像しているかという論考は90年代に始まったばかりである。したがって、その考え方が演劇学の分野にまで浸透していない現状がある。本研究では、小山内薫や坪内逍遙など日本の近代演劇を率いた人々が、「翻訳劇」を媒体にしていかに「ナショナルシアター」の構築に向かったか、そして例えばスタニスラフスキーシステムなどがそのナショナルシアターにどのような意味を持ったかなどを、オーストラリアへの演劇におけるナショナリズムの展開、翻訳劇や外国演劇理論の導入の歴史などと比較した。