表題番号:2002A-015 日付:2003/07/30
研究課題アメリカ移民法における国籍概念の形成
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 宮川 成雄
研究成果概要
 本年度は国外でアメリカ市民の子として出生した者のアメリカ市民権の取得について検討した。とりわけ、国外出生の婚外子について、アメリカ市民たる者が父である場合と母である場合では、子のアメリカ市民権取得の要件に相違があることについて検討した。これは国外に派遣されたアメリカ軍兵士が子をもうけた場合にしばしば問題となる。
 生地主義を採用するアメリカ法においては、国外で出生したアメリカ市民の子について、市民権の取得のために一定の要件を満たせば、アメリカ市民権の取得を認める補充的血統主義が採用されている。基本的要件は親のアメリカ国内での居住年数である。すなわち、国外で子をもうけた親は、その子にアメリカ市民権を伝えるためには、当該親が5年以上アメリカ国内に居住していることが原則として要求される。
 しかし、婚外子の場合、アメリカ市民たる親が父であるときには、単なる子の出生の事実の証明だけではなく、子が18歳に達する前に、認知等の手続きを踏まなければ、その子のアメリカ市民たる地位は認められない。これに対し、アメリカ市民たる親が母である場合には、出生の事実だけで、その子にアメリカ市民たる地位が認められる。ここには、国家と個人の絆として、単なる生物学的なつながりだけでなく、親と子の実質的な絆の形成の機会が重要な要素として考えられていることが伺われる。