表題番号:2002A-010 日付:2003/05/10
研究課題新しい戦争法の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 島田 征夫
研究成果概要
 2001年9月11日に勃発したニューヨークのワールド・トレード・センターへの航空機による自爆攻撃は、世界の人々を震撼させる出来事であった。これに対し、アメリカは、首謀者と見られるビン・ラディンを捕捉するためと称して、アフガニスタンをはげしく空爆し、多くの死傷者を出した。
 こうした新しい兵器による大量殺戮は、何も今回が初めてではない。20世紀の初頭の第一次世界大戦中の毒ガスや第二次世界大戦終了時の原子爆弾による攻撃にも見られるものである。
 戦争法は、19世紀に、所謂正戦論が破綻してから発達したものである。しかし、戦争法は、危険な兵器が出現して後に国際法による規制が始まるのである。つまり、後追いをするわけである。新しい戦争法は、兵器の発達と同時進行して発達しなければ、民間人の被害は増大するばかりである。今回のイラク戦争でも見られたミサイル攻撃やクラスター爆弾など、は危険極まりないものである。
 1907年の陸戦の法規慣例に関する条約の前文に、同条約に明文の規定がなくとも、諸国は依然として人道原則や国際慣習法の拘束を受けることを確認する「マルテンス条項」と呼ばれるものがある。これは、条約で禁止されていなければ当然に適法であることを意味しないという趣旨である。上に述べた危険な兵器は、この条項で禁止できないだろうか。
 現在、この条項の問題を含めて論文を執筆中である。