表題番号:2002A-009 日付:2003/05/23
研究課題世紀転換期の国際商取引に見る紛争解決制度の現状と課題―知的財産権侵害における国際裁判管轄権と準拠法―
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 木棚 照一
研究成果概要
 まず、経済産業調査会から木棚編で『国際知的財産侵害訴訟の基礎理論』を2003年4月に出版した。本書は、全501ページで知的財産侵害訴訟における国際裁判管轄権と準拠法に分けて、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、スイス、中国、台湾、韓国、日本の9カ国につき立法・判例・学説を概観し、各国の法状態と問題点を明らかにした。また、最近最も問題となっているインターネットによる知的財産権侵害を管轄権と準拠法の双方の面から総合的に考察した。執筆者は全部で15名であり、私は、全体につき編集者として関わったほか、「序文」、第1章「問題の所在」、第3章『知的財産侵害訴訟における準拠法」のドイツ及び日本の部分、「結びに代えて」の部分を執筆した。この書物は、この問題に関する本研究費による研究成果の一つのまとめとして位置づけられ、この種の著書としては日本で最初のものといえる。
 つぎに、国際私法学会の国際私法年報3号に「国際私法の統一と国際私法」と題する論文を書いた(173から201頁)。知的財産法の国際的統一につき工業所有権と著作権に分けて歴史的に遡って現代までを考察し、問題点を示すとともに、今後の展望を明らかにした。また、この分野における統一法条約と国債私法の関係を属地主義の問題に着目しながら準拠法だけではなく、国際裁判管轄権にも着目しながら明らかにした。
 また、Law & Technology誌の16号に「知的財産紛争の準拠法」を書いた〈53から61頁〉。この論文は、知的財産紛争につき、知的財産の準拠法、知的財産権侵害の準拠法、知的財産権の譲渡契約及び実施許諾契約・使用許諾契約の準拠法に分けて、最新の判例や学説を比較法的に検討し、特許、商標,著作権についてどのようになるかを明らかにしたものである。
 さらに、青林書院から出版された小野昌延先生の古希記念論文集に「知的財産法に関する統一の沿革的考察」を書いた〈1から25頁。これは、TRIPs協定など最近の条約によって知的財産法に関する統一法がどの程度進んだか、統一に伴いどのような問題が生じたかを明らかにし、国際取引法秩序全体の中で知的財産法の統一を考えるのがTRIPs協定であるとすれば、そこから生じる問題もたんに知的所有権の中だけではなく、広く国際経済秩序全体の中で解決すべき側面があることを指摘した。