表題番号:2002A-003 日付:2003/12/01
研究課題経済的・金融技術的条件変化と協同組織・地域金融機関の現状と課題
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学部 教授 森 映雄
研究成果概要
金融機関の信用リスク管理ミスが不良債権の発生源である。それは、貸出後のマクロ経済情勢の変化、借り手と貸し手との情報の非対称性による借り手のモラルハザードに影響されるが、本研究では信用金庫の短期的収益を目指した「貸し過ぎ」という「貸し手のモラルハザード」に起因するという視点を加え分析した。
1)信用金庫の(貸出金伸び率―名目GDPの伸び率)が信用金庫の不良債権比率と正の関係にある。
2)信用金庫の債務保証残高/総資産比率は信用金庫の不良債権比率に正の効果を持つ。
3)地域密着度の代理変数としての店舗集中度の上昇(減少)は、信用金庫の不良債権比率を減少(上昇)させる。
4)バブル後の地価下落の大(小)、バブル後の経済成長率の下落率の大(小)は、信用金庫の不良債権率を上昇(減少)させる。
以上、4つの仮設を立てそれを都道府県別信用金庫について実証分析した。仮設1)、2)は信用金庫の「貸し手のモラルハザード」による、仮設3)は信用金庫の情報生産能力による、仮設4)はマクロ経済情勢の変化による影響を考慮したものである。
実証分析の結果、1)、2)の仮設は有意に証明できた。殊に、債務保証残高/総資産比率の不良債権比率への説明力は高かった。仮設3)は有意に証明できなかった。店舗集中度が信用金庫の情報生産能力を高め、エージェンシーコストの低下、不良債権比率低下に寄与していない現れと理解される。仮設4)については地価下落率が有意な説明因子であった。成長率よりも地価変化の方が信用金庫にとって重要であった。