表題番号:2001C-009 日付:2004/04/05
研究課題電気化学的手法による新規金属ナノ構造体形成プロセスの開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助教授 本間 敬之
(連携研究者) 理工学部 教授 逢坂 哲彌
(連携研究者) Department of Chemistry, Stanford University Associate Professor Chidsey, Christopher E.D.
(連携研究者) Stanford Synchrotron Radiation Laboratory, Stanford University Professor Pianetta, Piero A.
(連携研究者) Laboratoire LI2C, Universite Paris VI Professor Chemla, Marius
(連携研究者) CRMD, Universite d’Orleans Assistant Professor Bertagna, Valerie
研究成果概要
 マイクロシステムは次世代産業の基幹技術と目されているが,その形成プロセスとして,高速形成性・精密制御性・一括形成性に優れた電気化学的手法は中心的な役割を果たすと期待されている.しかしながら同手法は析出機構などに未だ不明点が多く,新規プロセスは多大な労力をかけて試行錯誤的に開発されており,析出機構の解明・体系化と,それに基づくプロセス設計指針の確立が切望されている.そこで本研究では,電気化学系,すなわち固液界面における金属析出・ナノ構造形成反応の素過程およびこれに影響する種々の因子の解明および得られた知見の総合的考察から,ナノ構造形成反応の体系化およびプロセス設計指針を確立し,これを基にした新規ナノ構造体形成プロセスの実現を目的とした.種々の系の中でも特にデバイス形成の基本であるシリコン表面に対する金属析出系を中心に検討を進めた.
 まず,シリコンウェハ表面と金属イオン種の反応に関するこれまでのスタンフォード大学との共同研究の結果から得られている,表面微小欠陥サイトにおいて金属イオン種の還元析出反応が優先的に進行するという知見を基に,任意形状のナノ欠陥をパターン形成することにより,極めて単純な系からCu,Ag,Au,Coなどの金属ナノ構造体を形成可能とするプロセスを開発した.これは,各種の微細導電回路,ナノ磁石アレイなどの形成に適用できるものである.
 一方,このようなナノ構造形成反応,あるいはその反応活性を検討するには,表面への金属析出反応および析出した金属量の定量解析が不可欠である.しかしながらその量は極めて微小であることから,通常の解析手法の適用は困難である.そこで,スタンフォード軌道放射光研究所の全反射型蛍光X線解析(SR-TXRF)を用いて検討を行った.その結果,反応機構および析出金属種の性質に対する溶存酸素の影響を明らかにすることが出来た.さらに同研究所のX線吸収端近傍微細構造解析(SR-XANES)から,析出した金属ナノ構造体の酸化過程を定量的に解析することが出来た.
 さらに,パリ大およびオルレアン大との共同研究研究により,複数の金属イオン種が共存する系からのナノ構造形成について検討を行った,その結果,特にFeの析出に対しCuが触媒的に作用することを明らかにした.
 以上の結果から,シリコンウェハ表面への電気化学的手法による新規金属ナノ構造形成プロセスを確立すると共に,その析出反応機構についても明らかにした.なおこれらの内容については引き続き共同研究を進めると共に,米国国立科学財団(NSF)シリコンウェハ工学産学協同研究センターのプロジェクト研究の一部へと展開している.