表題番号:2001C-007 日付:2008/06/04
研究課題カテコール誘導体修飾遷移金属アルコキシドからの無機-有機ナノコンポジットの合成~無機成分と有機成分間に化学結合をもつナノコンポジットの合成手法の開発~
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 菅原 義之
研究成果概要

無機-有機ハイブリッドにおいて無機成分と有機成分をナノレベルでハイブリッド化することにより、無機化合物あるいは有機化合物単独では得られない物性が発現することが期待されている。その代表的合成法であるゾル-ゲル法による無機-有機ハイブリッドは、一般にSi-C結合を有するSiアルコキシドを加水分解・重縮合反応することで合成されている。一方、遷移金属酸化物の前駆体である遷移金属アルコキシドは金属炭素結合が不安定であることから、キレート結合を利用する必要がある。そこで本研究では1,3,5,7-テトラメチルシロキサン(TMCTS)を出発物質として、テトラシクロシロキサン骨格を有するカテコール誘導体を合成し、さらにこの誘導体とTi(OiPr)2(acac)2を反応させることにより、4つのカテコレート基がそれぞれTiに配位したSiO2-TiO2系有機無機ハイブリッドの前駆体を合成した。まずTMCTSと4-アリルベラトロールとのヒドロシリル化反応を行ったところ、Si-H基、C=C基の消失が明らかとなり、また新たにプロピル基の生成が示された。さらに29SiNMRではTMCTSで見られた-30 ppm付近のシグナルが-20ppm付近にシフトしていた。以上の結果からヒドロシリル化反応が進行したことが示された。BBr3との反応によりアリールメチルエーテルの開裂を行った後、Ti(OiPr)2(acac)2との反応を行ったところ、OH基とOiPr基の消失が示された。また13CNMRからカテコールのC-O基のシグナルが大きく高周波数側にシフトしており、反応によりC-O環境が変化したことがわかった。これらの結果はカテコール誘導体が、iPrOHの脱離を伴いカテコレート基としてTiに配位したことに起因すると考えられる。さらに29Si NMRからシクロテトラシロキサン骨格は維持されていることが明らかになった。以上の結果から、カテコール誘導体が4つのTi(acac)2基に配位した化合物が合成されたものと結論した。