表題番号:2001B-043 日付:2003/05/08
研究課題マルチバンチ・大出力レーザーフォトカソードRF電子銃の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学総合研究センター 教授 鷲尾 方一
(連携研究者) 理工学総合研究センター 教授 濱 義昌
(連携研究者) 理工学総合研究センター 専任講師 柏木 茂
研究成果概要
フォトカソードRF-gunを用いた高品質電子ビーム生成とその応用について研究を行ってきた。陰極には、高量子効率のCs-Teを用いることにより、電子ビーム励起用レーザーの負荷を軽くし、低いエネルギーでシングルバンチからマルチバンチまで制御可能である。RF-gunにより生成した電子ビームのエネルギーは3~4 MeVで、その後、第一加速管(L0)において80MeVまで加速される。その際、電子ビームのエネルギー幅を1 %以下にすることができた。そのため、ビームロス0の状態で下流のLinacセクションでさらに1.28 GeVまで加速され、BT、DRを通過し、EXTセクションでビームを取り出すことができる。EXTセクションでは、これまで早稲田大学、KEK-ATF、都立大学の共同研究で進めてきているレーザーコンプトン散乱による円偏光ガンマー線及び偏極陽電子生成実証実験を行っており、14年度には、ガンマー線の偏極度を測定することに成功した。一方、喜久井町施設では、フォトカソードRF-gun単体の性能評価実験を行い、同時にこれまで確立してきたレーザーコンプトン散乱の技術を応用し、X線顕微鏡を目指した「水の窓」領域の軟X線生成を行った。RF-gun単体の性能評価実験では、スリットスキャン法によるエミッタンス測定の技術を確立した。軟X線生成実験では、フラッシュランプ励起によるレーザー増幅器を開発し、出力を増強した。その結果レーザー出力を10倍まで増幅することに成功した。そして、レーザーフォトカソードRF-gunによって生成した4 MeV程度の電子ビームと上記の増幅したNd;YLFレーザー光(波長1047 nm)を衝突させ、レーザーコンプトン散乱により、エネルギー約300eVの「水の窓」領域の軟X線を生成することに成功した。その際、RF-gunに照射している電子ビーム励起用のレーザーと衝突用のレーザーは、同じSeedレーザーから生成されており、同期をとる事が容易であり、全体のシステムが非常にコンパクトなものになっている。また、この軟X線のエネルギーは、窒素のK殻吸収端と炭素のK殻吸収端の間にあたり、さらに水に吸収されにくい性質を持つことから、軟X線顕微鏡への応用が期待されている。