表題番号:2001B-042 日付:2003/04/23
研究課題高分子の放射線場での応用に対する物理・化学過程と材料特性変化の系統的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学総合研究センター 教授 浜 義昌
(連携研究者) 理工学部 教授 大木 義路
(連携研究者) 理工学総合研究センター 教授 鷲尾 方一
(連携研究者) 理工学総合研究センター 専任講師 柏木 茂
研究成果概要
 高分子材料を中心にそれらの放射線照射による材料特性の改良,それを発現する物理,化学的過程について種々の手法を用いて解析した。
 イオンビーム照射によるポリエチレンの特性変化については,イオンビームの特徴である物質の深さ方向へのエネルギー付与が均一ではなく,飛程近傍において非常に大きくなるという特徴と,物性変化の対応を顕微FT-IRシステム,力学特性測定,ゲル分率測定を駆使して,詳細に検討した。その結果として,イオンの種類,エネルギー,電荷等により局所的反応過程が異なることを系統的に検討することが出来た。また,反応基礎過程として重要な各反応生成物に対するW値(100eV当たりの生成量)を種々のイオンに対して解析し,イオン照射の特徴を詳細に検討することが出来,それらの成果を国際会議において招待講演として発表する機会を得た。
 さらに,放射線照射後の高分子材料の長期劣化過程を検討した。その結果,照射に起因する活性種が原因となり,非常に長期にわたる劣化反応が継続することを見出した。その過程は,材料中に放射線照射によって初期に生成する活性種の寿命と酸化過程に大きく依存し,その酸化過程の機構を系統的に見出すことが出来た。この結果は放射線場で使用される高分子絶縁材料にとっては重要な指針である。
 この他,ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の融点近傍における照射によって架橋体の作成が可能であることを利用し,新材料の開発を目指している。
 また,小型加速器の開発を行ってきたが,ビームの発生に成功し,今後この加速器を利用してさらに放射線化学的研究の充実が期待される。