表題番号:2001B-041 日付:2003/05/02
研究課題宇宙粒子線中の超重核成分の高精度観測
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学総合研究センター 教授 長谷部 信行
(連携研究者) 理工学総合研究センター 助教授 鷹野 正利
(連携研究者) 理工学総合研究センター 客員教授(専任扱い) 宮地 孝
(連携研究者) 理工学総合研究センター 客員講師(専任扱い) 岡田宏之
研究成果概要
研究成果の概略
  高エネルギー宇宙粒子線中の超鉄核成分は、強度が極めて少ないが、鉄族元素とは異なる元素合成過程を得て作られることから、それらの観測は宇宙線の起源や伝播を知るうえで貴重な情報を与えてくれる。超鉄核の観測例は殆どない。特に、1)アクチニド元素、2)超鉄核元素の同位体(質量数A<130)、について正確に求めることが重要である。
HNX(Heavy Nuclei eXplorer)探査機は、1)のU/Thや超ウラン元素を含めたアクチニド元素をカバーする宇宙線観測装置である。超鉄核の絶対強度が小さいために、視野角をできるだけ広く持つ大面積検出器が必要である。更に、核電荷を高精度で同定する事が検出器の性能として要求される。そこで、浜松ホトニクスと協力して大面積シリコン検出器(92×92mm、380μm thickness)の開発と実用性を検証した。電荷・質量の決定精度に大きな影響を与える検出器の厚みムラを、放射線医学総合研究所のHIMAC重イオン加速器からの高エネルギーAr,Xeビームを用いて調べた。その結果、有感面積全体の厚さの非一様性は0.7%以下であることが得られ、宇宙線中のアクチニド元素まで高精度で弁別することができる事が明らかとなり、HNX計画に十分使用できることが実証できた。
HNX計画では、上述2)の同位体の情報は得られない。そこで、将来の宇宙線実験のために、鉄族から質量A<130の同位体について、高分解能で計測する観測装置、A)Si検出器ΔE×Eテレスコープ、B)固体飛跡検出器CR-39、の開発に着手した。A)については長期安定型の肉厚大面積Si(Li)の開発を始めた。B)については、従来、元素弁別は実施されているが、同位体弁別は試みられてない。そこで2002年度からCR-39を利用した実験に取り組んでいる。鉄の同位体(A=56、55)の照射を行った。満足いく結果とはいい難いが、改良することでA~100まで質量弁別できる見通しがついた。その結果は、2003年7月の第28回宇宙線国際会議で発表予定である。