表題番号:2001B-024 日付:2003/05/08
研究課題広域災害時に対する太陽光無停電電源システムの実用化
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助教授 若尾 真治
(連携研究者) 理工学部 教授 岩本 伸一
(連携研究者) 理工学部 教授 石山 敦士
研究成果概要
 高効率な太陽光発電(PV)システムの開発にあたっては、太陽電池や蓄電池などの構成要素の容量配分や、蓄電池充放電制御における充電開始蓄電池電圧などの様々なシステムパラメータを適切に決定しなければならない。しかし、その決定に必要なデータの収集には、長期間にわたる実験を要するため、すべてのパラメータの変動がシステムに与える影響をあらゆるパターンについて定量的に評価し、最適なパラメータを決定するのは困難である。そこで、効率よくシステム評価する手段として数値シミュレーションの導入が有効であると考えられる。数値シミュレーションは過去に蓄積された気象データを利用してパラメータの様々な組合せのもとで極めて短時間にシステム動作の解析ができ、その解析精度が高ければ高いほど太陽光発電システムの設計開発が高度化できる。このような背景のもと、本研究では、蓄電池を備えた太陽光発電システムの挙動を模擬する数値シミュレータの高精度化に関して重点的に検討を行った。特に、蓄電池充放電特性の新たなモデル式を導入することにより、高精度化の達成を試みた。ここで、蓄電池充放電特性に着目した理由として、太陽光発電システムにおいては蓄電池電圧がPVアレイの切り離しや系統連系などのシステム動作制御の基準となる重要な物理量であり、ひいては、蓄電池充放電特性のモデル化が数値シミュレータの精度を左右することが挙げられる。また従来から蓄電池充放電特性のモデル化は困難であることがよく知られている。本研究では蓄電池充放電特性の新しいモデル式として、充電電流値、および複数の係数を用いて対数関数により記述するモデル式を提案した。このモデル式により、様々な充電電流値の変化に応じた蓄電池電圧の変動を精度よく表現することが可能となった。また、蓄電池は残存容量がある値を超えると蓄電池電圧が急激に上昇することが知られており、この蓄電池電圧上昇率の変化点も係数を用いて記述されている。さらに、これらのモデル式内係数をいかにして決定するかが重要になるが、本研究では遺伝的アルゴリズムにより蓄電池電圧の計算誤差率が極力小さくなるように決定する手法を開発し、数値シミュレータの高精度化を実現した。その際、モデル式内係数の時間的変動が蓄電池の劣化状態を把握する指標となり得ることも、新たに見出した。また、検証用の例題として、広域災害時に対する太陽光無停電電源システムを取り上げ、提案手法の妥当性と有効性も確認した。
 以上の成果は、従来の太陽光発電システムの設計方法とは異なる新たな有効なアプローチを提案したものであり、他の様々な種類の太陽光発電システムの設計においても、十分に有効なものと考えられる。