表題番号:2001B-016 日付:2003/03/17
研究課題遠心型ターボ機械の内部流れおよび騒音の発生機構と特性に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 太田 有
(連携研究者) 理工学部 教授 吉岡 英輔
研究成果概要
遠心型ターボ機械から発生する空力騒音を対象として,実験的および数値的研究を実施した.実験では,低圧産業用遠心送風機と,高圧過給機用遠心圧縮機の2種類の実験対象を準備し,それぞれを比較・検討できる体制を作り上げた.まず,低圧用送風機に関しては,従来の研究成果を基に,翼通過周波数基本成分と高次成分とを同時に制御する新方法を提案した.この制御法の特徴は,幾何形状を変化させることで騒音伝播系の特性に影響を与えて騒音を受動的に制御する方式と,音源の詳細な把握に基づいて能動的に圧力変動をキャンセルし,音源特性そのものを変化させる方式とを併用する点である.音源振幅が著しく大きい翼通過周波数基本成分に関しては受動制御方式が,高次成分については能動制御方式が極めて有効であることを実験的に確認した.この制御方式の採用によって,低圧遠心送風機の翼通過周波数騒音は,基本成分と高次成分をそれぞれ同時に20dB程度低減することが可能となり,騒音スペクトル上に現れる顕著な離散周波数成分を,ほぼ広帯域成分のレベルまで減じることが出来た.次に,高圧過給機用遠心圧縮機の発生騒音は,その構造上低圧の場合とは著しく騒音特性が異なり,羽根車吐出流とディフューザ案内羽根との干渉に起因する離散騒音成分が支配的となることがわかった.このため,干渉騒音が発生し,羽根車,ディフューザ,吸込管路を伝播して系外へ放射される物理過程を,一次元音響波の線形重ね合わせモデルによって推定する試みを行った.この結果,比較的周波数が高く,一次元平面波の仮定が困難となる周波数帯を除けば,モデル値は実験値と概ね一致する傾向を示した.しかし,360Hz付近に著しく音圧が減少する傾向が認められ,その特徴が音源自体の周波数特性と定性的に一致することから,双極子音源の特性自体を再検討する必要性が示される結果となった.一方,数値解析研究はまずその準備段階として,低圧遠心送風機と高圧遠心圧縮機の翼間流路を計算対象として,RANSによる計算コードの構築を開始した.この際,翼面上の流れの剥離が発生騒音に大きく影響することを鑑み,MenterのSST乱流モデルを導入することを検討している.