表題番号:2001B-002 日付:2003/05/06
研究課題経済における協力と維持に関するメカニズムの研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学部 教授 船木 由喜彦
(連携研究者) 政治経済学部 助教授 荒木 一法
研究成果概要
 本研究は「経済における協力と維持に関するメカニズムの研究」と題し、協力の形成と維持に関する経済学実験を主体として研究を行った。
(1)研究代表者と分担者の間で定期的に議論を続け、ゲーム理論に基づく協力の形成モデルを情報構造の多様性に応じていくつか提示し、詳細な実験計画を立案した。さらに、それを基に実験プログラムを完成させた。早稲田大学大学院経済学研究科のPC室において、このプログラムを用いた実験が随時、可能となった。ネットワークを利用した実験の場合、プログラムの設計、レイアウト、動作確認、仕様の調整等に時間がかかり、従来の実験票や実験用紙を用いた場合よりも格段に準備時間が必要である。なお、ネットワークを利用した実験研究の調査のため、充実した実験施設を保有する北海道大学文学部山岸研究室、公立函館未来大学川越研究室、大阪大学社会科学研究所西條研究室、京都産業大学実験ラボラトリ等を訪問した。
(2)上記プログラムを用いた実験を8日間(計10回)行った。各回の被験者は早稲田大学の学生(大学院生を含む)各15名(12名の回有り)であり、延べ147名に対して実験を行った。ただし、前半の3回の実験は、プログラムの問題点や実験手順の不備を確認する予備実験であり、後半の7回の実験が本実験であり、実験データの詳細な分析を行った。特に、最後の2回は実験結果の頑強性を調べるための包括的な実験であった。これらの結果、理論的予想に反し、定型化された非協力的行動がかなりの頻度で確認された。また、実験の成果報酬の与え方によって実験結果が左右される現象が表れ、この結果も非常に興味深いものである。これらの結果が生ずる原因の探求も含め、さらなる実験計画とその結果の考察が必要である。
(3)日本国内および海外から専門家や研究者約30名を招き、定期的に研究会を開催し、本研究に関連する内容の報告とそれに対する議論を行った。その成果は(4)の研究にも反映されている。
(4)最後の2回を除く本実験の結果および、それを考察したものを共著論文「協力の形成と維持の実験-関係の継続性と報酬支払い方法の影響」としてまとめ、2002年10月20日に敬愛大学(千葉)において開催された実験経済学コンファレンスにて報告を行った。これらの成果に最後2回の実験結果とその考察を加えて、共著論文を完成させ、今年度中にレフェリー付き学術雑誌に投稿する予定である。なお、これらの研究過程で議論した実験アプローチの特徴とその役割については別途、研究代表者が共著論文として公表した。