表題番号:2001B-001 日付:2003/04/07
研究課題廃棄物地域産業連関最適化モデルの開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学部 教授 中村 愼一郎
(連携研究者) 政治経済学部 専任講師 栗山 浩一
研究成果概要
これまでに筆者らは,伝統的な産業連関表・モデルを廃棄物管理諸策の分析に適用可能なように拡張した廃棄物産業連関表・モデルを開発してきた。 また,シナリオ分析の方法により,環境・経済への影響評価についての 定量分析 (LCA) を行ってきた。この分析モデルを最適化問題のかたちへと拡張し,「最適な」廃棄物管理策探索の枠組みを提供することを主目的とする。 固定投入・排出係数を前提とすると,これまでの廃棄物産業連関分析モデルは線形方程式系として表現される。 解の一意性確保のためには,生産物 (変数) と生産技術 (係数行列の列) とが 一対一に対応しなければならない。 したがって,廃棄物処理・再資源化等の代替的技術の導入は 別の係数行列として表現され,新たに方程式系を解く必要が生じる.モデルを線型方程式系から線形計画問題へと拡張することで, この煩雑さを解消し,シナリオ選択における恣意性を排除することが出来る。 加えて,政策目標に即した目的関数 (例えば,最終処分場消費最小化) を設定することで,「最適な」廃棄物管理計画の策定が可能となる。最適な」廃棄物管理計画探索の枠組みを提供するだけでなく, 既存モデルでは困難であったシナリオ (温暖化ガス排出量削減目標など) が 自然なかたちで容易に導入可能となった。
応用事例として,筆者らが開発した廃棄物産業連関表データを用い,厨芥のメタンガス化発電(残渣は堆肥利用),廃プラスチックの高炉還元利用,および焼却の広域化を選択しとし,目的関数としてCO2および最終処分場消費量を設定した分析を行った。埋立容量は最大で25%削減可能であり,その場合,CO2 も0.9% 削減される。CO2は最大で 1.9% 削減できるが,最終処分場消費削減を優先すると 0.9%しか削減されない。その一方で,CO2は最大で 1.9%削減できるが,その場合,埋立容量は7%以上増加してしまう。埋立容量削減を優先しても CO2排出が基準値より増加することはない。しかし,逆に CO2排出削減を優先すると埋立容量が増加してしまう,という意味で相反関係(トレードオフ)の存在が見いだされた。