表題番号:2001A-905 日付:2002/03/16
研究課題エジプト新王国時代における青色彩文土器に関する実験考古学的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 本庄高等学院 教諭 齋藤 正憲
研究成果概要
古代エジプト新王国時代における青色彩文土器の青色顔料を復原する実験的研究を実施した。
 本年度は既に蛍光x線分析により推定されている発色材の化学組成を参考に、薬品を調合し、複数の焼成実験を試みた。その結果、残念ながら美しい空色の復原には至らなかった。多くの場合、暗紫色から紺色を呈した。ここでは耐火度の問題を考慮し、主たる発色材の成分とされるコバルトの含有率を5パーセント以下に下げて実験を試みたが、復原には成功しなかった。
 そこで、陶芸顔料メーカーに問い合わせたところ、コバルトでは発色が困難ではないか、銅による発色ではないかとの指摘を受けた。確かに、陶芸の常識から言えば、コバルトにより空色を発色させることは例は少なく、呉須に代表される顔料は紺色から群青色を呈することが多い。さらにメーカーの指摘では、これまでの蛍光x線の分析が間違えているのではないか、微量に含まれるコバルトに意識がいきすぎているのではないかということであった。
 本年度は顔料の復原には至らなかったが、陶芸の視点に立ち戻ることにより、本研究は大いに進展したと考える。これまでの常識を疑い、詳細な化学分析を再度実施することで、青色顔料の発色に一定の決着をつけられることが明らかとなった。これを受けて来年度以降は、資料の剥片を採取しての分析を試みる計画を立てた。これまでの化学分析の誤りがあるとすればそれは、それが非破壊の手法により実施されたことに起因すると考えられる。剥片を採取することで、より厳密な環境のもと、分析を行なうことができ、多大な成果を期待することができる。その上で再度、復原実験に着手する考えである。