表題番号:2001A-892 日付:2002/05/13
研究課題無電解めっき法による超高密度磁気記録用軟磁性材料の研究開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助手 横島 時彦
研究成果概要
ハードディスクに代表される磁気記憶装置においてその記憶容量の増加はとどまることを知らず,また増加を支えるためにはさらなる高密度・高速記録が必要となっている.キーデバイスの一つである磁気ヘッドには,より高い書き込み能力及び高速書き込み,さらにはデバイスの小型化が必要であり,そのためには高い飽和磁化Bs及び高い比抵抗ρを有する軟磁性材料が強く求められている.そこで,微細なヘッドの作製が容易である無電解めっき法による高Bs・高ρを有する軟磁性薄膜の開発を行った.無電解CoNiFeB軟磁性薄膜はBs =18-19 kGと高いBsを有するもののρ=20-30μΩcmと低いため,電気めっきにおいて軟磁性薄膜のρの増加が知られているβ-アラニンを用いて本薄膜の高ρ化を試みた.
まず,βアラニン添加による膜組成への影響について検討を行ったところ,添加量にかかわらず膜中金属組成はほぼ一定の値となった.磁気特性はβ-アラニン添加量に依存するものの,0.10 mol・dm-3までは軟磁気特性を有し,またこの時Bsは無添加時と比較して若干減少する傾向が認められるもの,17-18 kG程度と依然として非常に高い値を示した.次にρの測定を行ったところ,β-アラニン添加量にほぼ比例して増大する傾向が認められ,最適値である0.10 mol・dm-3 添加時においては約80 μΩcmと,無添加時に比べて3-4倍の値を示した.C含有量の測定からβ-アラニン濃度の増加ととも膜中のC含有量が増加しており,電子の不純物散乱が促進されたことにより膜の高ρ化が実現したものと考えられる.また,本薄膜の高周波特性について検討を行ったところ,ρを増加させる前の薄膜に比べ良好な高周波透磁率を示した.これはρの増加により渦電流損失が抑制されたことが原因の一つであると思われる.