表題番号:2001A-858 日付:2002/04/16
研究課題BER/吸着プロセスの高度水処理性能とその速度
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 榊原 豊
研究成果概要
 農薬および硝酸塩による水源(地下水及び地表水)の汚染が先進国を中心に顕在化している。本研究はこのような汚染水を浄化する新しい水処理法として、生物膜電極槽(BER)に吸着プロセスを組み込んだハイブリッド生物膜反応槽の水処理性能について検討した。なお、殺菌剤のイソプロチオラン(IPT)をモデル農薬として用いた。
 これまでの研究では、1)被処理水中に硝酸塩のみが存在する場合、BER内の水素利用性微生物の作用により、有害な硝酸塩を窒素ガスに効率良く還元・無害化(脱窒)できるが、2)農薬のIPTが高濃度で存在すると、脱窒過程の最終段階が阻害され、有害でかつ地球温暖化物質でもある亜酸化窒素が蓄積することを明らかにしている。
 このような問題を解決するために、陽極に粒状活性炭(GAC)を充填したハイブリッド生物膜反応槽を提案し、その処理性能を表わす数理モデルの構築を試みた。モデル計算値は実測値と比較してその妥当性を検証すると共に、BERとGAC吸着槽を直列に組合わせた水処理プロセスの性能と比較した。その結果、硝酸塩除去に関してはハイブリッド生物膜反応槽と組合わせプロセスはほぼ同様な性能を示すが、処理槽内の亜酸化窒素濃度はハイブリッド生物膜槽が組合わせプロセスの約1/100以下になることが示された。すなわち、本研究で提案したハイブリッド生物膜槽は硝酸塩酸塩と農薬の同時処理法として優れた性能を有することがわかった。今後は他の農薬も含め、GACの再生法及び農薬の直接分解法について研究する予定である。
 なお、本研究結果の一部は、2001年IWA国際水会議(ベルリン会議)で発表した。