表題番号:2001A-815 日付:2004/02/12
研究課題ベラスケスにおける二つの“古代”
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学部 教授 大高 保二郎
研究成果概要
「ベラスケスにおける二つの古代」とは、一つは古代神話や古代の哲人、英雄物語を題材にしての制作とそれらに対するベラスケスの態度であり、いま一つは主に第二次イタリア旅行の際、国王の命を受けての古代美術品(もっぱら彫刻類)の蒐集とその実態である。いずれのテーマも古代、ルネサンス、イタリアという、ベラスケスがバロックの巨匠の地歩を築いていくための本質的な問題をはらむ重要なものであった。
 神話や哲人を描いた作品はその態度にプッサン、レンブラント等と共通する傾向をはらむ反面、それらが飾られた“場(トポス)”を考慮するならば、その物語や登場人物の世き方を通して、国王や皇太子に代表される王侯一族に教訓、模範をたれる必要があったことを明らかにすることができた(成果1)。
 また哲人、古代彫刻とも関連づけるべきベラスケス中期の作品《彫刻家モンタニェースの肖像》をめぐる考察においても、この問題を検討した(成果2)。
 他方、ベラスケスが蒐集したとされる古代彫刻が具体的にどのようなものであったか。その成果の一部はブリヂストン美術館の講演で発表したが(成果3)、その全容を解明するにはまだまだ研究が足りない。これは今後の課題であり、平成16年度に申請中の科研費が採択されるならば、大いにこのテーマを追究していきたい。