表題番号:2001A-814 日付:2002/05/11
研究課題カナダにおける未成年者に対する医療と同意
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 助手 横野 惠
研究成果概要
 カナダでは,同意能力のない未成年者の医療に対する同意を親が拒否する場合,各州に存在する児童保護立法にもとづいて裁判所が介入する。本研究では,第1段階の作業として,各州の関連法規を横断的に調査することによって,未成年者の医療に対する同意権の所在および児童保護立法による介入の手続を明らかにすることを試みた。その結果,カナダの児童保護立法による介入の手続は,親および子の権利の手続的保障に対する配慮が非常に厚いものであることが明らかとなった。このことは,日本法に対する示唆として重要である。わが国においては現在のところ,親の同意拒否に対する法的介入は行われていない。しかし,法的介入の必要性は以前から指摘されており,そのための法的枠組みを検討することが必要であると思われるからである。以上の研究成果については,論文「カナダにおける未成年者に対する医療と同意─児童保護立法による介入を中心に─」で紹介した。
 現在,本研究の第2段階の作業として,輸血拒否に関するカナダ最高裁判所判決を紹介する準備を進めている。上記のように,カナダの児童保護立法には,裁判所の介入によって親および子の権利が侵害されないよう配慮した手続が設けられているがその背景には,権利および自由に関するカナダ憲章,ならびに子の医療に関する親の決定権が同憲章第7条で保障されるリバティ・インタレストであると判示した上記カナダ最高裁判所判決があると思われる。論文「カナダ憲法判例にみる未成年者の医療に対する親の権利─輸血拒否をめぐる最高裁判所判決を中心に─」では,同判決を取り上げて子の医療に関する親の決定権のカナダ憲法上の位置づけについて検討する予定である。