表題番号:2001A-811 日付:2003/10/21
研究課題外国語の授業における教師・学習者間のインターアクションと外国語学習プロセス
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 専任講師 星井 牧子
研究成果概要
 外国語学習を考察する上でインターアクションの分析が重要な意味を持つことはしばしば指摘され、多くの研究が行われてきた (Allwright 1984, Chaudron 1988, Edmondson 1981, 1983, Gass 1997, Henrici 1995)。しかしこうした先行研究は言語行動の分析が中心であり、非言語行動の分析はあまり行われていない。会話における非言語行動の重要性(Goodwin 1986, 1995; Streeck 1983, 1994)、また非言語行動は人間の内言をも表出しうる(Wienold 1998, 2000)という考察からも、教室内インターアクションを言語行動・非言語行動の両面から分析することはきわめて重要だと考えられる。本研究では外国語授業場面におけるインターアクションに関する従来の分析およびそこで用いられている概念を批判的に再検討することを試みた。また学習者インタビューなどのデータを用い、外国語の授業における教授・学習の過程を多面的に分析することも試みた。
 授業をビデオカメラで記録したデータを分析したところ、学習者が発話する際のインターアクションから次のようなことがわかった。
・非言語行動はインターアクションの「場」を形成する上で非常に重要な役割を担っている。
・「インターアクションの軸」と「学習課題」との交代は必ずしも重ならない。多層的な埋め込み構造がみられる。
・非言語行動を発話としてとらえると、言語レベルでの「話者交代」の間に非言語レベルの「話者交代」が行われている。後者は学習者が発話する際に重要な情報を提示していると考えられる。
・言語行動からみた'self-initiation'と'other-initiation'の関係は、非言語行動を含めてインターアクションをとらえると逆転するケースも見られる。
・学習者の表情や視線などの非言語行動には、「何かを理解した」あるいは「理解できない」といったシグナルが多数あらわれている。
・複数の学習者が存在する授業という場でみられるインターアクションはきわめて多層的な構造をとっている。
 こうした多層的なインターアクションの中で行われている個々の学習者の学習過程は、その大部分が観察不可能であるが、学習者インタビューなどの内省的手法を用いることにより、学習者の発話の作り出される過程について有効な示唆が得られることもわかった。