表題番号:2001A-612 日付:2006/11/17
研究課題大学生スポーツ選手の健康管理に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 助教授 鳥居 俊
研究成果概要
 男子長距離走選手10名および競泳選手10名ののコンディションを把握する目的で、血液検査(血算、筋逸脱酵素、コルチゾール:CS、遊離テストステロン:f-T)、POMSテストを実施し、コンディションの自覚的評価(5段階)と比較検討した。練習意欲、練習感覚、体調はf-TやT/Cと関連し、疲労感もT/Cと関連が見られた。練習経過のみ赤血球数やヘモグロビン値と関連があった。POMSの怒りは赤血球数やヘモグロビン値と、活力は白血球数、CSやT/Cと、疲労はT/Cと関連が見られた。自覚的評価とPOMSとも関連し、特に活力と疲労との比(V/F)と相関が高かった。以上より、血液検査とPOMS所見は自覚的評価と関連し、特に血液検査のT/CやPOMSのV/Fが有効な指標になると期待された。
 生体インピーダンス法に基づく体組成分析装置を用いて各運動部の選手のデータを分析した。競技選手にとって、身体組成や各分節での筋量の分布は直接的にパフォーマンスに影響する要素である。本年までに陸上競技選手の競技記録と身体組成・各分節の筋量との関連性について検討した。短距離選手は中・長距離選手より身長・体重・脂肪量が多く、上肢・下肢水分量も体重に一致して多かった。下肢水分量に対する上肢水分量比は短距離で最も高値であり、長距離で最も低値であった。男子短距離選手の100Mの記録と上肢水分量比とは相関し、上肢水分量比の高い選手は速い記録を有し、また上肢水分量の左右差の小さい選手ほど速い記録を有していた。一方、男子長距離選手では下肢水分量比が高い選手で5000Mの記録が速い傾向があった。投擲選手では上肢の水分量の左右差が見られたが、下肢水分量の左右差は他種目と差がなかった。女子短距離選手では男子に比して筋量が少なく脂肪量が多いほか、上肢筋量比が低かった。以上の結果より、短距離選手では全体の筋量が多いだけでなく上肢筋量比を高くし、上肢の左右差を小さくすることが、長距離選手では下肢筋量比を高くすることが速い記録を得ることにつながると考えられた。このような計測により、競技選手の目標とすべき身体づくりを意識したトレーニング計画の作成が可能になると期待される。