表題番号:2001A-611 日付:2003/04/04
研究課題脳の性分化における性行動抑制神経機構の役割解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 教授 山内 兄人
研究成果概要
1.雌雄ラットの中脳中心灰白質に逆行性トレサ-を注入し、外側中隔中間部の逆行性トレーサー陽性細胞の数を測定した。その結果、雄に比べて、雌において多くみられた。ロードーシス抑制神経細胞の数が雌のほうが多いことを示すものである。
2. 雌雄生殖腺除去ラットにおいて、エストロゲンα受容体またはβ受容体の二重免疫染色を行い、中隔外側部の神経細胞におけるエストロゲンの受容体の発現を調べた結果、中隔外側部においては、β受容体含有細胞のほうがα受容体含有細胞より有意に多く、また、どちらもエストロゲンの有無には影響されなかった。対照部位として同様の染色を行った視索前野では、α受容体もβ受容体もあり、α受容体陽性細胞数はエストロゲンがないほうが多かったがβ受容体陽性細胞は変りがなかった。1.と同様な操作を基盤に、逆行性トレ-サ-とβ受容体二重染色を行った結果、二重染色陽性細胞数の逆行性トレーサ陽性細胞総数に対する割合は雌雄とも20パーセント以下で、有意な違いはなかった。
3. 外側中隔に存在すると考えられる、GABA,ニューロテンシン、NPY,エンケファリン、などの神経伝達物質の分布を免疫組織化学法で調べた。ニューロテンシン、GABA外側中隔に多量に見られた。また、エンケファリンがある程度見られた。
4. ロードーシス抑制力をもつセロトニン神経に関しては、雄雄ラットの前脳におけるセロトニン量を測定した結果、中隔、視索前野、視床下部腹内側核などロードーシス制御に関わるところのセロトニン量は雌のほうが多いことが示された。
5. 母性行動の制御に関して、分娩直後の、セロトニンニューロンを多量にもつ正中縫線核の破壊及び腹側部切断がリトリービングやリッキングを強く抑制することから、正中縫線核の重要性が示唆され、論文が国際誌に受理されている。これは母性行動神経機構の性分化を探る基礎データとなる。