表題番号:2001A-606 日付:2006/10/12
研究課題身体から発せられる匂いによって思春期の親子関係はいかに規定されるか
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 教授 根ケ山 光一
研究成果概要
 体臭が親子関係の発達的変化といかに関連するかについて,発達行動学の立場から検討を行った.具体的には,小学生・中学生・高校生・大学生(年齢のレンジ=9〜23歳,平均14.4歳,SD3.0)1028名とその保護者(子の年齢レンジ4〜18歳,平均12.5歳,SD2.6)に対する質問紙調査を行った.身体各部に対して,親・子がそれぞれ自分の匂いと子ども・親の匂いについてどのように快・不快感情を持っているかを評定してもらったところ,身体各部のなかでもとくに口・足の裏・脇の下,頭髪の匂いを不快に感じており,それは自分自身の匂いも相手の匂いも同様であることがわかった.さらに,父親の匂いが子から強く拒否される傾向がある一方で,母親の匂いに対しては子からの拒否が非常に軽微であり,その不快度は子が自分自身の身体の匂いに対して感じる不快感よりもはるかに低いという興味深い結果を得た.そこで,年齢を10〜13歳,14〜17歳,18〜23歳の3群に大別したうえで,男女別に父親と自分の体臭が「臭う」「強い」「気になる」か否かを比較したところ,女子における「父親の体臭が気になる」に関してのみ年齢の上昇とともにその程度が高まる傾向が見られた.そういう発達傾向は自分の体臭に対しては見られなかった.一方において,父親の体臭が気になる男子は年齢に関係なく父親との関係がよくないという有意な対応があったが,女子と父親の間にはそういう関連性は確認できなかった.
また親から子の体臭への感情について,子の年齢を12歳までと13歳以上に2分割して,その発達的傾向を調べたところ,親・子のいかなる性の組み合わせにおいても有意な変化が認められず,体臭による親子の反発性の発達的変化は,親から子へよりも子から親へという方向において顕在化する可能性が強く示唆された.ただし,親から子への感情については,事例数が必ずしも十分でないため,今後さらにデータを補充し,発達的な傾向を詳細に検討する必要がある.