表題番号:2001A-578 日付:2003/04/23
研究課題半導体極微粒量子構造のスピンダイナミクスの研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助教授 竹内 淳
研究成果概要
・量子ドット間の反強磁性結合の観測
 半導体中の電子スピンを自由に操ることが可能になれば、我々は新しい自由度を手に入れることになる。この自由度を応用すれば、新しい機能を持ったデバイスを実現する可能性が生まれるだろう。半導体の中に3次元的に電子を閉じ込めるナノ構造を量子ドットと呼ぶが、この量子ドットの中の電子スピンの向きをデジタル情報の0と1に対応させれば、情報処理の可能性が生まれる。ただし、隣接するドット間のスピン同士で交換相互作用を働かせる必要がある。我々は、半導体量子ドット間の交換相互作用によって反強磁性結合が形成され電子スピンが反転する過程を、時間分解フォトルミネセンス測定によって直接的に観測した。電子スピンの反転が70-200psで起こること、また、反強磁性秩序が、50-80 K以下の温度で存在することが明らかになった。

・高均一量子ドットのスピン緩和時間とスピンパウリブロッキングの観測
 高均一量子ドットのスピン緩和時間を、時間分解フォトルミネッセンスを用いて測定した。その結果、10Kでのスピン緩和時間が1nsであることが明らかになった。これは、不均一な量子ドットのスピン緩和時間の測定値1.3nsとよく対応する。
 一つの量子ドットに二個の電子が入った場合、両者のスピンが同じであれば、パウリの排他原理により、同じエネルギー準位には入れない。このため、基底準位に1個、第二準位に1個、電子が入ることになる。この効果をスピンパウリブロッキングと呼ぶが、このため第二準位のスピン偏極率が基底準位より大きくなると予測される。実験では、第二準位が基底準位の約2倍のスピン偏極率であることが明らかになった。