表題番号:2001A-577 日付:2005/10/25
研究課題パターン形成メカニズムの超離散化手法によるデジタル化
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 高橋 大輔
(連携研究者) 理工学部 名誉教授 広田良吾
(連携研究者) 理工学部 助手 新澤信彦
研究成果概要
 本研究は,超離散化手法および超離散化手法が基盤とするマックス-プラス代数によって,変数がデジタルのパターン形成モデルを提案し,そのパターン形成メカニズムを明らかにする研究である.なお,超離散化とは,統計物理での低温極限に相当する過程を数学の方程式にあてはめ,デジタル化を行う手法のことである.
 研究の前半部分では,マックス-プラス型の空間2次元時間1次元のデジタル反応拡散系を作ることに成功した.この系は非常に単純な方程式によって記述されるにもかかわらず,ターゲットパターンやスパイラルパターンを再現することが可能であり,自然界でしばしば観察される反応拡散系のデジタルアナロジーになっている.我々の系の注目すべき点は,対称性を仮定することによって方程式の次元を2+1次元から1+1次元そして1次元にリダクション可能であるという点で,これによってパターンを表現する厳密解を明示することが可能になる.このことは従来知られている反応拡散系では不可能であり,解構造を数学的により詳しく調べることが可能になったという意味で,大きな成果が得られたと考えられる.
 さらに研究の後半部分では,再帰型方程式に対して焦点を当てた.「再帰」とは任意の初期値から常に一定の周期で元の初期値に戻ってくるという性質のことをいう.差分型の再帰方程式のうち超離散化可能なものがいくつか知られており,代表的なものにキスペル系がある.そして我々は超離散再帰方程式における再帰メカニズムを明らかにした.実は,これら方程式は,変数変換を通じて線形のマッピングに帰着する,いわゆる線形化可能な方程式であることがわかった.この知見は超離散力学系の理論の基盤をなすものであり,今後の理論の発展に対して大きな貢献をなすことが予想される.