表題番号:2001A-570 日付:2003/05/09
研究課題メディアネットワークにおける高圧縮符号化技術に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 松嶋 敏泰
研究成果概要
多種多様な形態の情報が多量に伝送,蓄積される,ネットワーク情報化社会において,情報の圧縮技術は欠く事のできない基盤技術となりつつある.情報圧縮の符号化(情報源符号化)の領域は大別して次の2つがある.①無歪圧縮(元の情報系列に可逆的に戻るもの)②有歪圧縮(元の情報系列に可逆的に戻らないもの)
本研究では主に①の無歪圧縮,特に無歪ユニバーサル符号化について扱った.
情報源の確率構造が既知の場合はShannon-Fanoの符号化,Huffmanの符号化等を用いることにより理論的圧縮限界であるエントロピーまで圧縮可能なことはよく知られている.しかし,現実のテキスト,画像の情報系列はその情報源の確率構造が未知である場合がほとんどで,このような場合が無歪みユニバーサル符号化の問題である.現在無歪ユニバーサル符号化アルゴリズムとして広く実用化されているZiv-Lempel符号は定常エルゴード情報源に対し漸近的にエントロピーまで圧縮できる優れた符号であるが,その収束速度は遅く,最適でない事が知られている.そこに近年,無歪みユニバーサル符号の収束の速さの理論的限界がアメリカの研究者により明らかになると共にそれを達成する符号(例えばベイズ符号)が提案された.また,木構造を有効に用いた符号化のアルゴリズム(CTW法)もオランダの研究グループにより提案され,理論ばかりでなく実用化についても可能性が開けつつある.本研究グループも理論と符号化アルゴリズム両面でアメリカ,オランダの研究者たちとほとんど同時期に同様の成果を発表し,その後もこの研究を発展させている.
しかし,これらのアルゴリズムは,計算量・メモリー量の面で問題があり,まだ実用的ではなかった.
そこで,本研究では無歪みユニバーサル符号の計算量・メモリ量において実用的なアルゴリズムの構築を行い,理論的,実験的にその性能の解析および評価を行った.また,情報源が時系列的に変化する場合のユニバーサル符号の提案を行い,その最適性の証明及び実験による評価も行った.さらにこの研究の拡張として,このベイズ的に最適なユニバーサル符号を信号処理や分散協調処理の問題へ応用しいくつかの成果が得られた.