表題番号:2001A-568 日付:2004/03/30
研究課題導電性ポリマーを材料とした電界効果トランジスターの開発と超伝導の探索
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 古川 行夫
研究成果概要
n+-Si基板表面に酸化シリコン層(膜厚,600 nm)を作製した基板上にソースとドレイン櫛形電極(Cr, 10 nm; Au, 30 nm)を蒸着し,ポリパラフェニレンビニレン誘導体であるpoly(2-methoxy-5-(2'-ethylhexyloxy)1,4-phenylenevinylene) [MEH-PPV]の溶液をキャストして高分子薄膜を製作し,共役高分子電界効果トランジスタを製作した.ソース・ドレイン電極間隔は 25 μm であり,幅は 15 cm であった.室温において,ゲート電圧 0 ~ -80 V で,ソース・ドレイン電圧を 0 ~ -100 V印加してソース・ドレイン電流を測定したところ,飽和特性が観測され,電界効果トランジスタとして作動していることが確認された.また,ソース・ドレイン電流の飽和領域において,ゲート電圧とソース・ドレイン電流のデータから移動度を計算すると,7.3x10-5 cm2/Vs の値が得られた.この値は非晶質シリコンの値と比べるとかなり小さい.ソース・ドレイン電流のオン・オフ比は 2.8x107であった.この値は既に報告されている有機電界効果トランジスタの値と比較して,桁違いに大きく,実用化に耐える値であり,PPV誘導体は有機電界効果トランジスタの材料として有望であることがわかった.位置規則性ポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)を有機半導体として,同様な電界効果トランジスタを作製した.また,デバイスの電荷誘起赤外スペクトルを測定し,電界効果により誘起されたキャリアを観測した.P3HTデバイスを使用して室温からヘリウム温度まで抵抗の温度変化を測定したが,超伝導は観測されなかった.さらに高い誘起電荷密度(すなわちドーピングレベル)を得るために,酸化シリコンよりも誘電率の大きな材料である酸化タンタル(誘電率,約23)などをゲート絶縁体層として使用するために,それらの高品質な薄膜を作製する必要がある.