表題番号:2001A-563 日付:2003/05/09
研究課題フィッシャー流実験計画法と田口流実験計画法との融合
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 永田 靖
研究成果概要
次の8つの課題に取り組んだ.

(1)検出力とサンプルサイズの検討
 広く使われている標準的な統計的方法について検定における検出力と区間推定に基づく観点から,非心分布の各種の近似式を検討し,実務的に使える近似式を整理した.それに基づいて,サンプルサイズの設計方式を整理した.今後の教育・研究に活用するため,それらの結果を,200ページあまりの冊子にまとめた.特に,今後は,多重比較法について,検出力とサンプルサイズの設計の問題を取り組んでいきたい.今回の成果は,その基礎となるものである.

(2)SN比についての検定
 測定機の性能を測る量としてSN比が提案されている.本研究では,複数の測定器のSN比の一様性の検定方法を導き,検定のサイズと検出力について検討した.簡便でリーズナブルな精度をもつ検定方式を得ることができた.

(3)重回帰分析における偏回帰係数の解釈について
 重回帰分析における偏回帰係数の解釈の問題は困難である.これを,グラフィカルモデリングの観点からの解釈と関連させて整理した.

(4)実験計画法における最適水準での推定量の統計的性能について
 分散分析表に基づいて,最適水準を決定して母平均の推定量を構成する場合,最適水準の選択による上方へのバイアスと,効果があるのにそれを無視してしまうことによる下方へのバイアスが存在する.それらを適切に評価し,制御することが,精度のよい推定につながる.本研究では,これらの観点から,推定量のバイアスと平均2乗誤差を評価し,どのような推定方式がよいのかを検討した.

(5)重回帰分析における寄与率の推定
 重回帰分析では,寄与率や自由度調整済み寄与率は基本的な統計量であり,常に参照される量である.しかし,それらが真の寄与率を精度良く推定できているとは限らない.モデルを固定させたときに,これらの推定精度を研究した論文は存在したが,本研究では,変数選択を伴った状況で,これらの推定精度について研究した.

(6)偏相関係数行列の感度分析
 偏相関係数行列はグラフィカルモデリングにおいて重要である.本研究では,偏相関係数行列について,個々のデータがどのような影響を有するのかという観点から,感度分析の研究を行った.

(7)MTA法についての研究
 MTA法はタグチメソッドにおいて最近開発された方法である.通常のマハラノビスの距離のかわりに,余因子に基づいて距離を作成する.本研究では,その問題点を整理し,2つの軸により尺度を構成する方法を提案した.

(8)実践的な統計教育の研究
 企業における多変量解析法や実験計画法に関する統計教育の問題点を整理し,改良案を提案した.