表題番号:2001A-557 日付:2005/03/26
研究課題中度好熱性細菌を利用した微生物脱硫と高機能脱硫細菌の創製
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 桐村 光太郎
研究成果概要
 石油等の化石燃料には有機硫黄化合物が含まれており、その燃焼によって発生する硫黄酸化物は大気汚染や酸性雨の原因物質となる。このため、日本や欧米では石油(とくにディーゼル燃料となる軽油)中の硫黄含有量については法的規制が強化される方向にあり、現行の500 ppm-Sから2004年には50 ppm-S以下、2007年には15 ppm-S以下への段階的移行が予定されている。軽油中には現行の石油精製工程では除去が困難な有機硫黄化合物が存在し、その代表的なものがジベンゾチオフェン(以下DBT)およびそのアルキル誘導体である。そこで、著者はDBTを唯一の硫黄源として利用可能な新規な好熱性脱硫細菌Bacillus subtilis WU-S2BやMycobacterium phlei WU-F1を単離し、それぞれの増殖菌体と休止菌体が実際の軽油に対して脱硫活性を示すことを確認した。さらに、WU-F1の休止菌体反応では石油精製工程で好適な45℃の条件下で、軽油層と水層の体積比を 1:1 として反応を行い、硫黄分の除去率を検討した。硫黄濃度が異なる3種の軽油を対象とした場合、市販軽油である 390 ppm-SのB-LGOを100 ppm-Sに、120 ppm-SのF-LGOを50 ppm-Sに、また深度脱硫軽油(試作品)である 48 ppm-Sの X-LGOを 10 ppm-Sにまで脱硫可能であることを明らかにした。以上の成果は、WU-F1を生体触媒として利用したバイオ脱硫によって、2007年度に予定されている硫黄分規制値15 ppm-S未満を達成したことを明らかにしたもので極めて意義深い。以上の結果より、WU-F1の優秀性が明らかになったため、当該菌株を宿主とした高機能脱硫細菌の創製を目的とした宿主ーベクター系の開発と形質転換法について検討した。一方、軽油中にはDBT誘導体以外に、非対称分子構造をとるナフトチオフェン(NTH)などの誘導体も含まれている。そこで、NTHを唯一の硫黄源として利用可能な新規な脱硫細菌としてRhodococcus sp. WU-K2Rを単離した。微量分析を駆使した中間代謝産物の解析から、WU-K2Rによる炭素ー硫黄結合を切断する脱硫機構を確定して、NTHについての硫黄原子特異的な分解機構の存在を初めて明らかにした。