表題番号:2001A-553 日付:2003/03/01
研究課題超臨界条件下における岩石・鉱物・マグマと熱水間における元素分配実験
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 内田 悦生
研究成果概要
 本研究では、地質調査所の日本岩石標準試料である沢入花崗岩JG-1aと塩化物水溶液間における元素分配実験およびザクロ石と塩化物水溶液間における元素分配実験を行った。
 前者のJG-1aとの元素分配実験では、反応溶液として2M NaCl水溶液を使用し、300~800℃、1kbの温度・圧力条件下で実験を行った。実験にはテスト・チューブ型高圧反応容器を用いた。実験後、固相と液相を分離し、ICPを用いて化学組成分析を行った。分析可能であった元素は、Na、K、Ca、Mg、MnおよびFeの6元素であった。800℃における分配係数(溶液中の濃度 / 固相中の濃度)は、Mn>Na≒K≒Fe>Ca>Mgであり、溶液中のFe濃度は5000ppmに、Mn濃度は350ppmに達した。熱力学的な解析から、これら遷移金属元素は、液相中では高温になるほどトリクロロ錯体として存在していると推測される。
 後者のザクロ石との実験では、固相出発物質としてスペサルティンを使用した。また、反応溶液としては、2N塩化物水溶液を用い、スペサルティンと塩化物水溶液間におけるMn、Fe、Ni、Co、Zn、MgおよびCaの同時分配実験を、500~800℃、1kbの条件下で行った。実験結果をPC-IR(分配係数-6配位イオン半径)図にプロットしたところ、Znを除いて、Mn近傍に頂点を持つ放物線が描けた。Znは液相中に濃集する傾向を示し、これは今までの他の鉱物を用いた実験結果からZnが4配位席を好む性質による。また、得られた放物線の勾配は他の6配位および4配位席を持つ鉱物と比較すると緩やかであり、これはザクロ石における二価イオンの交換席が8配位で大きく、イオン選択性が4配位および6配位の場合と比べて緩やかであることを示している。また、放物線は温度が高くなるにつれて緩やかになり、高温になるにつれてイオン選択性が小さくなることを示している。