表題番号:2001A-551 日付:2004/11/24
研究課題和周波発生分光法による気液界面における分子の構造とダイナミックスに関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 伊藤 紘一
研究成果概要
本特定課題研究助成金によって得られた研究成果を以下にまとめる.

(1)チタンサファイヤレーザからの800 nmの光をシード光とした再生増幅により1 kHz,パルス幅約3ピコ秒,先頭出力約800 mJの一部を可視光源をもとに1200-4000 cm-1の範囲で波長可変の赤外光源を作製し, SFG分光測定装置を完成した.得られた赤外光の出力は,1パルスあたり2800 cm-1で約5 mJでこれまでのところ2000-4000 cm-1 の領域でS/N比の良好なSFGスペクトルの測定が可能であることを確かめた.

(2)パルミトイル‐L‐リジン(PL)およびパルミトイル‐L‐オルニチン(PO)についてLangmuir‐Blodgett (LB)膜法で石英基板上に作製した単分子膜についてレーザ光入射面とLB膜作成時の基板引き上げ方向とのなす角度を-180 - +180°の範囲で変化させつつPLおよびPOの側鎖のペプチド基のNH伸縮振動のSFGピーク強度変化を測定した.その結果を理論的に解析し,ペプチド結合による水素結合鎖は基板引き上げ方向に対して平行であること,水素結合鎖中のNH基の配向には2種類あって,それらの傾き角は約+45と-45°をとることを明らかにした.

(3)SFG測定装置の光路を変更調整し水表面単分子膜のSFGスペクトル測定を可能とし, PL水表面単分子膜のSFGスペクトル測定を行った.パルミトイル-L-およびDL-リジン(L-PLおよびDL-PL)パルミトイル-L-およびDL-オルニチン(L-POおよびDL-PO)の水表面単分子膜のSFGスペクトル測定に応用した.とくに側鎖のメチル基の配向角に注目して測定解析した結果,(i) 水表面上のL-PLおよびL-PO単分子膜のメチル基の傾き角は,石英基板上より大きく表面圧の増加とともに減少する,(ii) 水面上のL-PLとDL-PLのメチル基の傾き角に特に低膜圧で大きな相違が観測されたが,L-POとDL-POでのメチル基の傾き角に大きな相違は見られない,などの知見を得た.とくに(ii)の結果はPL水表面単分子膜においてD-体とL-体が特異的な会合状態を形成していることを示し興味深い.