表題番号:2001A-547 日付:2003/05/09
研究課題開放的ハミルトン力学系におけるアーノルド拡散の普遍則の決定
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 相澤 洋二
研究成果概要
 カオス力学系における一つの特徴的な現象は、相空間内における軌道の拡散現象である。力学系ごとに、また非線形系の性質や自由度の多さに応じて特徴ある拡散現象が発生する。拡散を相空間の構造と結びつけて大域的に理解することが本研究の目的である。具体的には、(i)異常拡散を生み出すハミルトン系の普遍構造の探求、および(ii)ランダムな外力を受けるハミルトン系の統計法則の探求を本研究では目指した。
 まず第一の異常拡散の普遍的な相空間の探求においては、アーノルド模型を詳しく解析し、位相変数の方向への拡散がレヴィ拡散に従う現象を発見した。これは位相方向にもKAMトーラスが高次元では存在できることを示すもので、従来知られていたものとは異なるトーラス構造を反映して、特異的な対数周期性の現象が説明できることを明らかにできたことは大きな成果であった。
 第二のランダムハミルトン系の統計法則の探求では、クラスター形成において出現する滞在時間分布のワイブル則が開放的ハミルトン系でも一般的に出現することを確認した。アーノルド拡散は多自由度系に固有の拡散現象であるが、開放系においても多自由度系と類似のワイブル則を明確に示せた意義は非常に大きい。さらに、長時間領域で、ワイブル則が重複指数則にクロスオーバーする現象を発見することができた。この点はまだ理論的に未解決であるが、新たな統計的普遍則を発見した意義は大きく、本研究の目標をかなり達成できたと思っている。