表題番号:2001A-533 日付:2006/04/27
研究課題炭酸塩岩の深部沈み込みに伴うダイアモンドの形成と流体の果たす役割
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育学部 教授 小笠原 義秀
研究成果概要
表層炭酸塩岩が大陸衝突に伴いマントルへ深部沈み込みをした例として、世界で最も深いところまで沈み込み地表に上昇してきたとされているカザフ共和国のコクチェタフ超高圧変成帯のマーブルを用いて標記テーマの研究を行い、以下のような成果を得た。
1.ドロマイトマーブル中で多量のマイクロダイヤモンドが生成していること。また、その含有量には試料ごとにきわめて大きな差異があること。ダイヤモンドの最高含有量部分では岩石1トンに換算すると2800カラットとなる。ダイヤモンドを最も多く含有するガーネット粒子の一部に累帯構造を示すものが発見されダイヤモンドの分布との関係が考察された。
2.ドロマイトマーブル中のマイクロダイヤモンドは光学顕微鏡下の詳細な形態観察から、R,S,Tの3つのタイプに区分された。これらのマイクロダイヤモンドは2つのステージで成長していることが、放射光を用いたマイクロラウエX線回折、レーザーラマン分光、マイクロカソードルミネッセンスなどの実験データから明らかにされた。
3.典型的なマイクロダイヤモンドは“星型”(S-type)をしており、核部と周縁部に区分される。マイクロラウエX線回折により、核部が単結晶であること、また周縁部は透明度の高い半自形結晶で、核部と異なる方位を有することがわかった。またマイクロカソードルミネッセンスのスペクトルとイメージでは明瞭に各部と周縁部の差異が検出された。周縁部で520nm付近のスペクトルが顕著であり、各部はきわめて微弱である。
4.以上の結果を総合し、マイクロダイヤモンドは第2ステージで流体から成長した可能性が高いことが示唆された。ドロマイトマーブル中でのダイヤモンドの形成は流体環境(その化学組成と不均質さ)に密接にかかわっていることが決定的になった。
5.ダイヤモンドの形成プロセスと深部沈み込み炭酸塩岩とその進化プロセスの一端が解明された。