表題番号:2001A-523 日付:2003/04/21
研究課題共分散構造モデルの理論的全体像の教授法に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 第一文学部 教授 豊田 秀樹
研究成果概要
本研究では,共分散構造分析(CSA, Covariance Structure Analysis),あるいは構造方程式モデリング(SEM, Structural Equation Modeling)と呼ばれる数理統計的手法の応用的技術に焦点をあてて解説する.技術と言っても,数理的な興味を優先させたものではなく,応用的に果実のある具体的な適用場面を必ず想定し,広範囲なSEMの適用分野に共通して利用できる決まり技である.

本研究は SEM に関する「入門編」「応用編」「事例編」の続編である.「入門編」は第1ページから順番に読み進める初心の読者を想定している.また「応用編」は,基本的に各章は独立に執筆されているけれども,やはり教程の体裁を重視している.伝えたい数理的な内容がまずあり,それを伝えるための手段として応用例を示している.「入門編」と「応用編」は理論を伝えるための教科書であった.それに対して「事例編」は「初めに解析したい現象ありき」であり,SEMを道具として使用しながら,データ解析の生の現実,実態をそのままに伝えようと企画した.


ところが「事例編」以後,SEMの応用的進歩には目を見張るものがあり,様々な分析ツールを使用することが可能になってきた.そこで「事例編」に積み上げる上級事例編とも言うべき本書「技術編」を企画した.「技術編」では,現時点におけるSEMの最先端の分析モデルを駆使しながら解説を進める.分析者自身がワクワクしながらモデル構成を楽しんでいる実況を伝える.SEMでは適切な実質科学的知見が多ければ多いほど,複雑なモデルを安定的に推定できる.当該分野の形のない適切な知識が,形のある変数やデータと同じくらい,あるいはそれ以上に統計モデルの解を安定させることを本研究を通じて示した.