表題番号:2001A-519 日付:2004/03/26
研究課題長期飼育環境におけるラットの採餌行動と弁別学習過程の分析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 第一文学部 教授 木村 裕
研究成果概要
 装置として「長期飼育実験箱」(横90×奥65×高110cm、高55cmに横60cmの水平板を張り、上部をフリーオペラント領域、下部を木屑を入れた巣部とし、一端30cmを上下をつなぐ巣部出入口とした)が用いられた.被験体動物として,ウィスター系ラットが,一装置に一匹を飼育する形で,計4装置に4匹用がいられた.巣部出入口と反対側の面には,レバー,給餌皿,給水ビンが取り付けられてあり,ラットは常時摂水が可能であった.給餌はラットがレバーを押し,押す回数に関する条件を満たすと,45mgのペレットを給餌皿に提示する方法で行われた.実験室は明期(20:00~8:00hrの12時間)と暗期(8:00~20:00hrの12時間)が繰り返す形で維持した.
 目的は,暗期に活動するラットが,餌の獲得が困難になることに対応して,どのようにレバー押し行動を変容させるかを,その過程とともに明らかにすることである.ペレットを獲得するのに必要なレバー押し回数を,押すたびにペレットが提示されるFR1条件(20日間)から,5回に1度のFR5条件(82日間),FR10(76日間),FR20(51日間),FR30(49日間),FR40(59日間)まで,順に変化させて,観察した.
 各ラットのレバー押し回数は,FR1からFR40までの順に,
ラット①が684→3908→3197→8092→1311→17954,
ラット②が780→2634→3560→5676→9568→14759,
ラット③が478→2866→3865→7078→12536→11199,
ラット④が586→1888→3248→7198→11067→17359,というように,増加を示した.
 また,獲得摂取したフッドペレットの数の変化は,
ラット①が648→784→320→405→437→449,
ラット②が658→527→356→284→319→369,
ラット③が423→570→378→354→418→280,
ラット④が497→378→325→360→369→434,という経過をたどった.
 給餌条件は明暗周期とは無関係に維持されており,ラットは明期・暗期いずれの期においてもレバー押しによって摂食が可能であったが,これらすべての給餌条件のにおいて,ラットは,暗期においてのみレバー押し(摂食)を行った.初頭の給餌条件下に獲得された数のペレットをその後も獲得するためには,最終的には40倍のレバー押しが必要であるが,ラットは,明期に活動することは無く,獲得できるペレットの数を減らしながら,暗期にのみ摂食する方略を選択したといえる.
 今後は,給餌条件をさらに順次変化させ,適応的反応の生起のあり方を確認することが課題となると考えられた.