表題番号:2001A-514 日付:2003/08/02
研究課題フランスにおける株式会社の業務執行機構とコーポレート・ガヴァナンス論
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 鳥山 恭一
研究成果概要
 株式会社の経営機構ないしは業務執行機構のあり方に関しては、従来から様々な形で議論がなされているが、近年では、「コーポレート・ガヴァナンス(corporate governance)」という標題のもとでそうした議論が各国においてなされている。もとより、そうした「コーポレート・ガヴァナンス」という同一の標題のもとで議論がなされていても、そこで対象にされている株式会社の業務執行機構のあり方は、各国で、それぞれの固有の事情を背景にして異なっている。それゆえ、各国における「コーポレート・ガヴァナンス」の議論も、それぞれ自国の事情を反映した固有の特性をもつものになっている。
 そこで、本研究は、フランス法を素材にして、フランスにおける株式会社の業務執行機構の形成と現状を確認したうえで、フランスにおいて近年なされている「コーポレート・ガヴァナンス(gouvernement d'entreprise)」の議論の内容を検証し、さらに、そうした議論との関連で、2001年5月15日の法律による株式会社法改正の内容を明らかにすることを目的にした。
 フランスでは、1966年の商事会社法全面改正の際に、株式会社の業務執行機構として、それまでの取締役会(conseil d'admiministration)からなるいわゆる一層制の機関構成に加えて、新たに、執行役会(directoire)と監査役会(conseil de surveillance)とからなる二層制の機関構成が定められており、株式会社はその定款においていずれの機関構成によるのかを定めるものとされている。
 その後、1990年代に始まったコーポレート・ガヴァナンス論の影響を受けて、2001年5月15日の改正では、一層制の機関構成においても、取締役会の会長(president)と業務執行者(directeur general)を分離させる可能性が認められたのである。
 本研究は、以上のような株式会社の機関構成の変遷を明らかにし、そのうえで、現行のフランス株式会社法による業務執行機構の内容を確認した。あわせて、フランスの主要企業40社の年次報告書の検討を通して、それらの企業の業務執行体制の具体的な内容も明らかにした。