表題番号:2001A-513 日付:2005/12/29
研究課題ヨーロッパ人権裁判所の判例の総合的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 戸波 江二
研究成果概要
本研究は、1998年9月に早稲田大学を訪問した欧州人権裁判所代表団と、早稲田大学とで共同して開催したシンポジウムで、「国際人権の保障における国際裁判所の役割」という講演を行ったことに触発されて、ヨーロッパ人権裁判所の人権判例および国際人権保障のあり方の研究を実施したものである。本研究に並行して、科研費基盤B(一般)「ヨーロッパ人権裁判所の研究」(代表:戸波江二、研究分担者17名)を得て、2002-2003年度の共同研究を実施した。なお、その後2004-2005年度にも、科研費基盤B(一般)「国際人権の地域的保障の総合的研究--ヨーロッパ人権条約と人権裁判所を中心に」(代表:戸波江二)を取得し、ヨーロッパ人権裁判所の判例研究を継続しており、2006年7月の刊行をめざして、判例集の編集を行っている。
本研究に関する2年間の研究では、国際的な人権保障のあり方の一つのモデルとなり得るヨーロッパ人権裁判所について、①判例研究、②組織、権限に関する研究、③ヨーロッパ人権条約締約国の側から見たヨーロッパ人権条約の実施、という論点について研究し、さらに、④人権裁判所の母体であるヨーロッパ評議会の組織と活動、およびそれがヨーロッパにおける人権保障の進展において果たしてきた役割、⑤他の国際機関、とりわけEUとの関係についても研究した。
また、2002年9月と2003年9月の2度にわたり、フランス・ストラスブール(2003年にはドイツ・ハイデルベルクマックスプランク比較公法・国際法研究所をも訪問した)に調査出張し、ヨーロッパ人権裁判所、ヨーロッパ評議会にて、裁判所裁判官、調査官、人権部会会長、日本総領事館を訪問して、ヒアリングと意見交換を行うとともに、判例・実務等の資料の収集を行った。これにより、人権裁判所の主要判例の体系及び最新の判例傾向が明らかになった。以上の共同研究・調査全体を通じて、国際法学の観点から、ヨーロッパ人権条約と人権裁判所の制度的側面についての研究を深め、憲法学の観点から、人権裁判所の判例の検討を通して、人権裁判所が保障する個々の人権の実体的側面がより明確になった。
なお、本研究代表者(戸波)は、2001年~2004年の間、日本学術振興会日独共同研究「憲法裁判の国際的発展」の研究代表者として、ドイツ人憲法研究者グループ(代表:ゲッティンゲン大学シュタルク教授)と共同研究を実施したが、この共同研究は、ヨーロッパにおける人権保障の裁判的展開の研究として、本研究テーマであるヨーロッパ人権裁判所の研究の一環をなしている。