表題番号:2001A-511 日付:2003/05/12
研究課題日本型雇用慣行の変容に対応した総合的雇用政策に関する法的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 島田 陽一
研究成果概要
本研究の初年度においては、雇用政策立法のうち、解雇規制立法の立法論的な検討を中心的課題とした。この研究成果は、日本労働法学会の平成13年10月に行われた第102回大会(統一テーマ:解雇法制の再検討)で報告することにより公表し、また、この報告は、「解雇規制をめぐる立法論の課題」(日本労働法学会99号、2002年5月)として公刊されている。その内容は、解雇規制に関する立法構想の提示を目的として、第一に、解雇権濫用法理および解雇立法論に関する最近の議論を踏まえて、日本の解雇法制について評価し、第二に、今日における解雇の立法規制の必要性を明らかにし、そして第三に、解雇規制において重要な立法課題に関する具体的構想を展開したものとなっている。
本研究の二年目においては、「解雇規制を中心とする雇用保障法制の立法的検討」を研究課題とする科学研究費(基盤研究C)の交付を受け、かつ本特定課題の助成をも受けることになった。ここでは、雇用・就業形態の多様化が進展する中で、雇用政策ないし労働法制の適用範囲自体が問われているという認識にたって、狭い意味での雇用政策ではなく、社会保障制度や税制などを視野にいれた総合的な雇用政策を考えるうえでは、労働者に類似する状態に置かれている多様な就労者の問題を検討することが重要な課題であると考えた。を無視することはできないと考えたからである。そこで、本年度の研究の重点をこの問題の解明にあてることにした。この結果、得られた知見は、労働法制を従来のように雇用労働者の法に限定することなく、多様な就業者の多様なニーズに対応させて、労働法制自体を再編することが必要であるということであった。そこでは、無償労働であろうと有償労働であろうと就労という事実が問題とされる領域、自営業と雇用労働者とに共通領域、従属的な自営業者と雇用労働者とに共通する領域および雇用労働者に固有に領域というように区分を設けて、それぞれに必要な保護を提供する仕組みを構想することを提案している。まだ、具体的な提案に至らず、初歩的な成果にとどまるが、現時点での到達点を、「雇用類似の労務供給契約と労働法に関する覚書」(下井隆史先生古希記念論文集『新時代の労働契約法理論』所収、信山社、2003年3月)として公表している。なお、「雇用類似の労務供給契約と労働法」(労働法律旬報1536号、2002年9月)は、本研究のエッセンスを紹介するものである。