表題番号:2001A-505 日付:2003/07/29
研究課題「EU電子政府構築計画と行政情報化に関する研究」
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学部 教授 福田 耕治
研究成果概要
 本研究では、EU電子政府構築計画の具体的な事例として、電子政府計画の一環として構築されたEUレベルの国際警察行政の情報化問題を取り上げた。第1に、EUのエイジェンシーとして創設されたユーロポールによるデジタル警察行政情報システム(犯罪者情報データバンク)の構築経緯を概観し、第2に、欧州諸国間での「シェンゲン情報システム」が、なぜEU行政情報システムのなかに次第に包摂・拡大されていったのか、さらにユーロポール・コンピュータ情報システムと連携化されたのか、具体的に考察した。
 EU電子政府計画では、国際犯罪者の取り締まりや移民の管理の必要性から、コンピュータによる統計的分析や犯罪者等の情報データベースを構築し、標的となる層やグループを特定し、集団の流入や動向を先読みし、監視する方向で電子情報化が進められてきた。
 ユーロポール官僚機構は、ユーロポール独自の国際公務員と加盟国警察庁等から派遣されてきた国家公務員(連絡官)という2重の構造をとっていることから、行政情報に対する責任の所在が不明確となりやすく、ユーロポールそのものの透明性欠如という問題を生じさせている。しかし、各加盟国からの情報を収集するためには、連絡官の存在は不可欠であり、今後の課題としては、ユーロポール協定が規定しているような説明責任を、EU司法・内務理事会に対して求め、同時に加盟国政府自体にも、説明責任を課し、電子政府の透明性を向上させることも不可欠であるといえる。
 2003年2月発効のニース条約に定める欧州検察庁(ユーロジャスト)との関係でも、警察と検察、および裁判所の国境を越える連携化が要請される。そこで、デジダル情報化された警察情報ネットワーク化が欧州レベルでさらに進行し、EU・欧州警察協力分野での国際協力の現実が浮かび上がる。本研究により、EU国際警察行政と加盟国警察行政の電子情報化を通じて、欧州警察行政の「e ガバナンス」によるマルチ・レベルの制度構造の特質と機能を分析し、その意義と問題点を明らかにした。