表題番号:2001A-184 日付:2002/05/10
研究課題リハビリテーションおよび緩和ケアを目的とした立体ディスプレイシステムの開発と評価
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 国際情報通信研究センター 講師 河合 隆史
研究成果概要
 本研究は、立体映像技術を、高齢者のリハビリテーションや緩和ケアへ応用するための取り組みである。前年度までの経緯として、指向性反射スクリーンによる立体ディスプレイを歩行訓練機に搭載し、高齢者を対象として、立体映像コンテンツの観察を伴った歩行訓練を行った。その結果から、高齢者の立体映像コンテンツに対する興味や意見を確認でき、高齢者を対象とする際の課題と、システム開発におけるハードウェア設計の改善が示唆された。そこで今年度は、本システムの福祉領域での実用化を目的として、システム設計に関するパラメトリックなデータの取得を行った。
 具体的には、ADLスコアが比較的高く、歩行訓練をリハビリテーションとして処方できる、高齢者11例(男性6例、女性5例。平均年齢75.6+-9.4歳)を被験者として、歩行訓練中の観察中心位置を測定した。結果から、上下方向には約40cm(トレッドミル上115~155cm)、前後方向には約45cm(サポートアーム前端から20~65cm)、左右方向には約25cmの移動範囲があることが分かった。左右方向においては、片足に支障がある場合、片側に寄ってしまうという傾向も見られた。本立体ディスプレイは、立体映像観察のためのメガネを装着する必要がない反面、観察位置がある程度限定される。被験者のプロトコル結果とあわせ、本システムの観察位置の裕度は、前後方向に5cm未満、左右方向に5cm未満であることが分かった。それより、高齢者の身体特性を考慮したシステム設計も必要であることが示唆された。
 本研究の今後の方向性としては、システム開発に加え、コンテンツに関する検討と評価、そして表情や身体動作の測定機能の付加など、福祉領域での実用化を目指し、システムの最適化を図っていきたいと考えている。