表題番号:2001A-162 日付:2003/10/02
研究課題マルチメディアを活用した高等学校物理テキストの製作
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 本庄高等学院 教諭 影森 徹
研究成果概要
1.はじめに
 物理の授業で、市販のシミュレーションを種々の場面で活用してきたが、疑問に思うことがあった。今、画面に描かれている線は、果たして理論に忠実に描かれているのか、忠実であるとしたらどのような式が使われているのか。そのことを生徒に理解させずに使用することは単に理解したつもりにさせているだけなのではないか。 そうは言っても以前は、プログラム言語を教えることから始まり、シミュレーションを作れるようになるためには長い時間が必要だった。 しかし、現在ではコンピュータの処理速度やアプリケーションソフトの操作性も飛躍的に向上し進歩している。それらを活用すれば、特別に高度な知識を持たなくとも、学習効果の高いシミュレーションを生徒が自分自身で、すべての動きを理解した上で、しかも短時間に作れるようになったのである。 このように技術の進歩を追い風にして、数年前から表計算ソフトでのシミュレーションを授業時間中に生徒に作らせる実践をした。

2.シミュレーションにEXCELを選んだ理由
プログラミング専用ソフトではなく表計算を使用する理由を以下にあげる。
・全校の生徒が必ず学習するアプリケーションである。(本校では1年の数学の授業で扱う。)
・学校だけにある特別なソフトではなく、家庭にあるほとんどすべてのパソコンに入っている。
・画面上で、計算結果が時々刻々変化していく様子が一目瞭然であり、パラメータの変更も容易である。
・シミュレーションの核をなす計算式が容易に入力・変更できる。(時間が変化する場合)
・簡単なマクロ(FOR・・・NEXT文など)で短時間のうちにシミュレーションが完成する。(複雑なもので2時間、簡単なものでは1時間程度)
・作成したシミュレーションは他の会社の表計算で互換性がある。
・デザイン面のみならずシミュレーション自体にも生徒の創意工夫を活かすことができる。
 しかし、この表計算で作ったシミュレーションは万能ではなく、より複雑なものは他の方法で考えたほうが良いことは言うまでも無いが、授業中に生徒が簡単に作れること、式を眺めていただけでは解らなかった動きが即座に理解できてしまうことなどを考えると導入する価値は充分あると考えられる。 また、実験とデータ処理とシミュレーションという理想的な組み合わせを可能にすることができ、学習効果も高まったと考えている。 実験でデータを取り終わってからも能動的に動く学習のスタイルは今までには経験しなかったものでもあり、放課後も残ってコンピュータにむかう姿も多く見られるようになった。

3.シミュレーションの製作例
 このような考えで作ったシミュレーションの中の一部を以下に挙げ今回実際に走らせてみる。ほとんどのシミュレーションは動きのあるものであるが、いくつかは動く必要のないものもありあえて静止画にした。
・等速直線運動
・モンキーハンティング
・円運動
・正弦波の伝播
・波紋の広がり(3D)
・波の重ね合わせ
・リサージュ図形