表題番号:2001A-148 日付:2003/05/20
研究課題境界人としての移民-ある日系ブラジル人と母語教育運動をめぐって
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 教授 森本 豊富
研究成果概要
 本研究では、次の2点について明らかにする計画を立てた。(1)長野県松本市在住のある日系ブラジル人仲里眞榮ロドリーゴ氏のライフヒストリーを作成する。(2)仲里氏が松本市に開校した外国語学校「ニッポラチナ外国語学校」の調査を通して、母語学校が日系ブラジル人コミュニティーに果たす役割を調査する。
 申請者は、異なる複数の文化に身を置く人びとのライフヒストリーの作成に関心を持ち、その一環として本研究を位置づけている。仲里氏はブラジルのサントス市に生を受け、その後、母親と妹と共に沖縄に渡り戦中・戦後の過酷な生活を体験した。仲里氏は、戦後に再度ブラジルに戻り苦労を重ねたのちに、1989年に再来日し、昨年9月に日系ブラジル人児童の母語教育のための外国語学校を設立した。本研究では、この人物のライフヒストリーの記述を通して、国境を越えて往来する人々の言語・教育面について検証することを目的とした。
研究目的(1)については、延べ7時間に及ぶインタビューをテープ(またはミニディスク)起こしする作業が進行中である。今後もこの作業を継続し、あわせて関連事項の調査を進めていきたい。また、幸いにも仲里氏から昔の写真や学校関連の書類など貴重な資料が提供されているので、有効に利用したいと思っている。
研究目的(2)の外国語学校については、2度参与観察を行いビデオ撮りした。景気後退の影響を受けて、在留日系ブラジル人の数も減少し、生徒数も週単位で変化している。ブラジル政府からの単位認定は許可されたものの、相次ぐ教員の交代や遠隔地への生徒の送迎など問題は山積している。これらの難題をいかに克服し、対処していくのかについて記録しまとめていきたい。
 尚、研究成果については学会誌を発表の場とする予定である。将来的には、学術書としての刊行も考えている。