表題番号:2001A-146 日付:2004/01/29
研究課題交通産業における経営合理化と労使関係の変化に関する実証的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 教授 河西 宏祐
研究成果概要
(1)交通産業のナショナルレベルの労使双方に対して、最近の経営状況、経営合理化、労務管理の変化について聞き取り調査と文書資料の収集調査を行った。その結果、当面する規制緩和(バス運行の自由化)が経営側にとって最大の課題であり、これにともなう厳しい経営合理化が従来の安定的労使関係を大きく変化させている実態が明らかになった。
(2)企業レベルでは広島電鉄を対象として、労使双方に対する聞き取り調査と文書資料収集調査を行った。その結果、①長引く経済不況やマイカーの増加、少子化などを原因とする利用者減によって収益率が大幅に落ち込んでいること、②今春に予定されている規制緩和によるバス業種の自由化に備えて、各種のリストラ策(社内カンパニー制、分社化など)を含む厳しい経営合理化が進められていること、③交通産業は労働集約型産業であるため、とりわけ経営合理化策は人件費の削減が焦点であり、人事管理策の転換、労働条件の切り下げ、労働密度の強化、出向・配転・降格・人員整理などが進んでいること、④このため、労使関係は緊張の度合いを強めており、対立的労使関係へと移行しつつあること、などが明らかになった。
(3)職場の管理者、組合職場委員に対する聞き取り調査よれば、とりわけ労使対立は職場レベルにおいて顕著になってきており、従来の職場慣行、既得権、職場文化の変更が進んできている。そのことが仕事と私生活の関係、余暇と生活をめぐる従業員意識などを変化させてきており、総じて勤労意欲(エートス)の変化をもたらしてきていることが明らかになった。このことが、今後の企業レベルの労使関係にどのような影響を及ぼすか、今後とも注目していきたい。