表題番号:2001A-141 日付:2002/03/12
研究課題情報に基づいた多期間資産負債管理に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学部 助教授 葛山 康典
研究成果概要
 企業の信用リスクに応じた負債の評価を行うための社債の評価について研究を行った。社債の評価においては、債務不履行が発生した場合、債券の回収率を推定する方法を提案し、実証研究を行った。社債価格は、額面と、債務不履行時の回収率を、債務不履行の発生に関するマルチンゲール確率で期待値をとったものとして評価される。この確率の推定については、いくつかのモデルが提案されているが、本研究では、Jarrow, Lando and Turnbull(1997)をベースとした。研究対象とした回収率は、米国では過去の債務不履行の事例から得られた平均値が報告されているものの、本邦ではこのような統計値が存在しない。そこで、社債の市場価格から統計量を推定する方法を提案した。モデルの構造上、回収率は常に債務不履行の発生確率と積の形式で現れる。そのため、従来は債務不履行の発生確率を推定するため、回収率を所与の定数として取り扱ってきた。本研究では、Jarrow et al.のモデルでは利用されていない、社債のフォワード価格の情報をモデルに取り込むことによって、回収率を推定する方法を提案した。実証研究の結果、本邦では、米国の平均回収率に比して高い回収率が推定された。
 また、社債の評価においては、しばしば発行体の信用力を表すために、格付けの情報が利用される。格付けは複数の格付け機関から発表されるが、Ederington(1986)が指摘するように、格付け機関によって格付け結果が異なるSplit Rating が生じる。そこで、社債価格から、格付けの無矛盾性が成立しているかについて検証を行った。