表題番号:2001A-135 日付:2004/03/22
研究課題パブリック・マネジメントにおける悪構造意思決定問題の構造化支援に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学部 教授 常田 稔
研究成果概要
 意思決定問題において,その目標をg,代替案の集合をX,環境状態の集合をYとするとき,(g,X,Y)があらかじめ与えられている場合その意思決定問題は良構造(ウェルストラクチャー)であると言われ,その一部もしくは全部が既知ではない場合それは悪構造(イルストラクチャー)であると言われる。悪構造意思決定問題に対しては,意思決定のいわゆる規範理論を適用することができない。そこで,意思決定者に対する支援が重要な問題解決手段となる。
 この研究では,パブリック・マネジメントを中心として,マネジメントにおける悪構造意思決定問題の構造化に対する支援の研究を行なった。特に,本年度は支援の理論的基盤を固めることに焦点を当てた。
 まず,「メタ意思決定」という概念を導入し,意思決定者が(g,X,Y)を構造化して行くプロセスを表現するモデルを開発した。これにより,従来よりも広い概念で統一的に人間の意思決定プロセスを把握することができ,そこから従来の支援の理論と技術が最適代替案の選択という狭義の意思決定フェーズに対するものに偏っていたのに対して,支援をより広く統一的に捉え,人間の意思決定プロセスの各フェーズに対する支援の適合性を客観的に評価することができるようになった。
 次に,組織事故におけるヒューマン・エラーは人間の意思決定プロセスのあるフェーズからから生ずるとの新たな考えを導入し,ヒューマン・エラーを意思決定論的に捉え直すことにより,組織事故を分析しそれを予防するための支援に対するフレームワークを構築した。また,このフレームワークに従って実際のパブリック・マネジメントにおける組織事故例を分析し,組織改善への具体的な支援を与えることができた。