表題番号:2001A-093 日付:2002/03/15
研究課題酸応力環境下におけるGFRP織物積層板の下限界特性
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 川田 宏之
研究成果概要
横方向繊維の一方向材(90°材)を供試材として応力腐食割れ試験を行った.その結果,クロス材と同様にda/dt-KI線図は低応力拡大係数域と定常き裂進展域に分類され,下限界値の存在も確認された.また,低応力拡大係数域においてはKI値の変動幅が大きく,き裂成長に伴いKI値が上昇していることがわかった.一般に,一方向材で繊維方向に沿い開口型き裂が進展する場合,繊維の架橋現象により閉口応力が作用するとされている.KI値上昇はこの架橋繊維の本数増加が原因であると考えられる.さらに水環境,大気中で試験を行った試験片破面を観察したところ,水環境では大気中に比べ繊維の露出率が高く架橋繊維が形成されやすい状況であり,特に水環境の低応力拡大係数域においては界面先行型の破壊形態であることがわかった.また,架橋繊維を円柱両端固定はりと仮定し算出した閉口応力を用いFEM解析により,各環境下におけるき裂成長に伴うき裂進展抵抗の上昇を再現した.
また,微視的観点から劣化メカニズムを評価するため,純水中に浸漬させた単繊維モデル試験片を用いたフラグメンテーション試験を行った.界面はく離,クリープの影響に着目し,これらが繊維強度・界面強度に及ぼす影響について調査し,これらの強度評価モデルについてより厳密な考察を行った.浸漬に伴う試験片の物性変化の影響を正確に評価するため,吸水膨張ひずみ,クリープひずみによるプリテンション応力を算出し,繊維強度に対して評価の補正を行った結果,強度低下の負荷応力依存性は無いことが明らかとなった.また,フラグメント過程で発生する界面はく離を考慮したモデルにより界面せん断応力の分布を検討した結果,界面はく離は界面強度に大きく影響を及ぼすことが明らかとなり,最大界面せん断応力ではなく系全体のエネルギバランスモデルを用いた界面強度の評価方法の有効性を示した.