表題番号:2001A-084 日付:2002/05/23
研究課題国際複合一貫輸送における貿易定型取引条件の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学部 専任講師 田口 尚志
研究成果概要
 本研究課題の下,貿易定型取引条件を規律するルールの世界的集大成とも言うべきインコタームズ(INCOTERMS)を取り上げ分析を行った.具体的には,2000年1月1日より新たなルールとして適用可能な状態に至っている2000年版(INCOTERMS 2000)を取り上げ検討した.その成果として幾つかあげることができるが,以下の2つを明らかにしたことを本「研究成果概要」で特記しておきたい.
 あまり前版の規定と実質的に変わってはいないといわれるインコタームズ2000ではあるが,その作り手であるICC(International Chamber of Commerce: 国際商業会議所)の解釈を併せて分析した場合,その適用範囲を非常に限定的に捉えており,利用者へ準拠法重視の姿勢を促していること.これが1つ目.また,インコタームズの伝統的なアプローチである実務慣行を尊重し,実務への擦り寄せを解釈面で行っていること.これが2つ目の点である.
 ここで後者に絞り主な分析対象としたFOB(Free On Board;本船渡条件)をあげて論ずれば,ICCが以前より推奨してきたFCA(Free Carrier;運送人渡条件)への移行に,実際界が躊躇っていることを明確に悟り,実務への擦り合わせを行なっているというICCの妥協的姿勢を明らかにした.同指摘はそもそもなぜ複合運送書類に関する規定がFOBに存在し,FAS(Free Alongside Ship;船側渡条件)にはないのか,という疑問に端を発し分析した結果得られたものであったが,研究では,ICCがship's railの基準を用いて補正しようとする点を明らかにした(この点,インコタームズの規定そのものからは全く分からず,あくまでもICCの解釈面を通して明らかになるものである).つまり,従来からの伝統的分類方法であった「いかなる輸送形態でも可能とする諸条件」と「海上および内陸水路輸送にのみ可能とする諸条件」の区分に,ship's railの基準を持ち込み,「海上および内陸水路輸送にのみ可能とする諸条件」の概念をより狭く解釈し,そこに現われている条件を可能な限りあらゆる輸送形態にも用いることができるように解釈する点である.なお,研究では,そのような基準を持ち込まざるを得ないICCの立場は,過去のインコタームズにおけるFOB作成過程を分析するのであれば理解できる旨の私論も展開している.