表題番号:2001A-080 日付:2002/05/09
研究課題ジェンダー教育および研究に多分化主義を導入することについて
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学部 教授 小林 富久子
研究成果概要
2001年4月から2002年度3月まで本研究者は、特別研究期間にあたっており、2001年4月、8-9月、および、2002年2月の計3回に亙ってカリフォルニア大学バークレー校を訪問、表記の課題について資料収集を行った。また、2002年2月にはUCLAでも資料収集を行った。最初の計画ではスタンフォードも訪問する予定であったが、バークレーはジェンダーと多文化主義教育に関してきわめて優れたプログラムをもっており、また資料的にも十分なものを有しているので、今回はほぼバークレーに絞ることにした次第である。特に2001年8月から9月にかけてはバークレーで正式な訪問研究員として滞在。エスニック・スタディーズ学部のエレーン・キム教授を指導教授として、さまざまな示唆を受け、かつ、Women's Studies Departmentで旧知のトリン・T・ミンハ教授の指導も得た。両学部で調査・研究ができたことはきわめて有意義なことであった。というのも、アフリカ系、ヒスパニック系、アジア系等の多様な少数民族の文化研究を主目的とするエスニック・スタディーズを通して、アメリカでの多文化主義教育の実態を掴むことができ、同時にWomen's Studies Department を通して同校でジェンダー研究並びに女性学がいかに教えられ、かつ、研究成果をあげているかがわかったからである。さらに重要な点は、両学部がしばしば強力し合って、ジェンダー研究にいかに多文化主義の視点を導入するかに感して腐心していることが判明したことである。
 翻って、早稲田大学をみる時、ジェンダー関連の講座こそ増加し、かなりの充実が実現されているが、日本のさまざまなマイノリティの視点が取り入れられているかというと、まだまだの感が強いことが痛感される。例えば、私自身が所長をしているジェンダー研究所のメンバーは、現在、法、教育、文学、社学等、各学部でジェンダー関連教育の任を担っている者が所属しているのだが、その専門は、米、英、独文学あるいは歴史等、かなりの率が欧米系である。但し、勇気付けられる点は、例えば、専門が米文学でも沖縄女性の調査をしている者、日本文学が専門だが元ハンセン病患者の文学研究に携わっている者等が含まれる点である。私自身も専門は米文学、特にアジア系米文学だが、現在、在日韓国人女性文学の研究に着手しており、去る4月26日に一橋大学で開かれた国際シンポジウムで、たまたまバークレーから招かれたエレーン・キム教授や韓国出身の言語学者イ・ヨンスク教授らと一緒のパネルでアジア系アメリカ女性文学と在日女性文学を比較する発表を行う機会を得た。なお、今回のアメリカ滞在の成果でもあるこの口頭発表は、近く、論文の形でまとめるつもりである。今後も引き続き、私自身の専門分野であるアジア系アメリカ研究と日本での在日文学研究をドッキングする形の研究を続け、さらに、ジェンダー研究所内で日本のマイノリティ女性の研究を行っているメンバーとの協力の基に、ジェンダー教育並びに研究に多文化主義を取り入れる方法を模索すると共に、それを実践する努力をしてゆきたい。